大晦日
店のこと
2023年01月25日
年が明けたと思ったら、早2月も目前。今回のブログのタイトルは「大晦日」。1月早々に書き上げて、新年のご挨拶とするはずが、なんとも間の抜けたことで。要領の悪さに新年から反省しきりです。
すっかり旬を逃した内容となりましたが、しばしお付き合いのほどお願いします。
前回のブログでも書きましたが(ブログ緊張感)、店を開けている間は緊張の連続。休日とて、休日にしかできない用事に追い立てられ。一方で、うまく休養することも仕事のうち、とばかりに休養にすら駆り立てられ。
なんて有り様で、ただでさえキャパの狭い私は、毎日がいっぱいいっぱい。そんななか一年でたった一日だけ、あらゆる緊張感から解き放たれる日があります。
大晦日です!
曜日の具合によりますが、年末はたいてい30日が最終営業日。11月の紅葉シーズンからそのまま12月の御歳暮に突入。一年で一番忙しい時期を乗り切り、やっとの思いで迎えるその日。
最後のお客様を見送ると、大過なく一年の営業を終えられたという、ただただそれだけで安堵の思い。
残務処理や大掃除など、やらないといけないことは山積みですが、もはや余力なく。来年に先送りできることは先送りにし。虚脱感と充足感、そして胸いっぱいの感謝の思いで、店をあとにするのが常です。
そうして迎える大晦日。申し訳程度の掃除と買い出しで、にわか年末気分を演出し。夕食に年越しそばをいただいたら、昭和な私の締めくくりはNHK紅白歌合戦。
年々、知らない顔ぶれが増えるなぁと嘆きつつ。鈴木雅之さんの大人のラブソングに痺れ。そうそう、こういうのをお願いしますよ、なんて思っていると…。
後半やっと、大人も大人、加山雄三さん登場。ずいぶんお年を召されたと思ったら、今回の舞台を最後とされるのだとか。その歌いっぷりは、まさに加山さんの全人生を物語るよう。胸迫るものがありました。
続くはスーパーフライの「Beautihful」。透明感あふれる声で女性の解放を高らかに歌い上げられ、胸すく思い。「そうだ、そうだ!」と心の中で大喝采。
石川さゆりさんの「天城越え」もいいですねぇ。女の情念、ここにあり! 「天城ぃ~越ぉえ~♪」一緒に唸ったりなんかして(笑)。
うん、紅組がんばれ!
なんて無邪気に思う自分が、心地いいこと、心地いいこと。そういえば去年最初のブログも紅白歌合戦ネタでした。よっぽど好きなんですねぇ、この番組。(ブログライフイズビューティフル)
なかでも印象深かったのは、50周年を迎えられたユーミンこと松任谷由実さんです。同じく50周年を迎えられた郷ひろみさんとのツーショットは美し過ぎる光景で。なにより度肝を抜かれたのが、郷ひろみさんにかけられたユーミンの言葉でした。
「60周年もここでお会いしたいですね!」
「しののめ寺町」は昨年10周年を迎え、10年というものがどんなに長いものか痛感したばかりです。「次は20周年ですね」なんて言われることがありますが、私にはギャグにしか聞こえず。それくらい10年というのは、気の遠くなる年数です。
それを私より年長の、私よりもっともっと厳しい世界で生きる人が、さらりと言ってのける。その向こうにあるであろう苦しみや葛藤などおくびにも出さずに。一線で輝き続ける人の矜持を見る思いでした。
やっぱり紅白歌合戦はいいもんだ。なんて感動に浸る一方で、出場歌手も残りわずかになってくると、ひたひたと湧いてくる寂しさ…。
店を始めて以来、私にとっての一年の終わりは、店の最終営業日になったんだと思います。その日で一旦すべてが終了。大晦日は、今年でもない、来年でもない、エアポケットのような一日。
昨日までの至らなかったあんなこと、こんなこと、全てを帳消しにして。明日からの心配事のあれこれをしばし棚上げにして。あらゆることから解放され、赦され、ただ「今」という時間を味わえる、一年でたった一日の特別な日。
もう少しこの時間に留まらせて。なんて思いながら聴く「蛍の光」の大合唱の切ないこと。
そんな私の思いなどお構いなく、あっという間に、華やかだった画面が一変。静寂の中に佇む神社や寺院が映り、厳かな除夜の鐘の音。
あぁ、また新しい一年が始まる…。
除夜の鐘の音(ね)は、私にはいつも次のラウンドのゴングに聞こえます。
有り難くも、年末年始は長い休みを頂戴していまして、実際にはまだまだ休みが続きます。けれど、大晦日のように、ただのんびりできるのは、もうおしまい。休みは休みでも、休み明けにしっかり働ける自分であるための休みに趣を変えます。
というわけで、お正月は、日ごろ放置しがちな家の整理が恒例になりました。
出勤前の身づくろいをしやすいよう、クローゼットを整理し。帰宅後の家事がはかどるよう、キッチン棚の中を入れ替え。仕上げは飾り棚のディスプレイを今の気分に模様替え。冒頭の写真がそれです。
家の中が整うと、気持ちも整うから不思議です。大晦日にまた幸せな一日を過ごせるよう、今年もがんばろう。最後にしっかり仕事モードに切り替えて、私のお正月休みが終わります。
こんな一年、一年を積み重ねて、10年後…。
「しののめ寺町」の一年の営業を終え、大晦日、紅白歌合戦で60周年を迎えたユーミンと郷ひろみさんのツーショットを観ている私がいる。
奇跡のような、あながち奇跡でもないような。そんな妄想をした年越しでありました。今さらではございますが、今年もよろしくお願い申し上げます。
緊張感
店のこと
2022年12月28日
よく思うことがあります。今の私を支えているものはなんだろう、と…。
店をやっている限りは、なにがあろうと定休日以外は店を開けなければなりません。開けた以上は、きちんと対応できねばならず。
店を始めるまでは、当たり前だと思っていたこんなこと。自分がやってみて初めて、決して簡単ではないことに気付かされます。
明日、私や家族が体調を崩したらどうしよう。店にあるさまざま機器が壊れたらどうしよう。お客様から苦情が舞い込んだら、おじゃこや山椒が獲れなくなったら、店のお金が底をついたら(リアル~笑)…。
不安を挙げればキリがなく、時に恐怖心にさいなまれることも。
その恐怖心を押さえ込むべく、あれこれ気配り、メンテナンスを心掛けるも、そもそもがキリのない不測の事態。すべてに対応し切れるはずもなく。あとは一心に祈るのみ。
いやはや緊張感いっぱいですが、いつからかそれが私の習い性になってしまいました。
正直、この緊張感から解き放たれたら、どんなに楽だろうと思うことも。
けれど、この緊張感こそが、日々に張りを持たせ、意識的に生きる後押しとなってくれているように思います。今の私を支えてくれているもの…。それは、まさに「緊張感」です。
その緊張感を持って、日々、自分の店と共に過ごせていること。大変ではありますが、得難い経験をさせてもらっているのだと感謝しています。
話は飛びますが、先日のサッカーワールドカップ。大変な盛り上がりとなりました。睡眠第一の私は生で見ることはありませんでしたが、その後の報道でも充分に楽しむことができました。
選手の皆さんの活躍はもとより、私が一番印象深く思ったのは、森保監督でした。選手に檄を飛ばされる時など、引き締まったいいお顔をされているなぁと、試合そのものよりそちらにくぎ付け。
国を背負って世界で戦う、その指揮を執る…。一般人には想像もつかない極限の緊張感かと思います。
夜は眠れるのだろうか、食事は喉を通るのだろうか、余計な心配をする私の方が具合悪くなりそうです(笑)。
が、試合後のインタビューなどを拝見すると、ご本人はいたって楽しそう。いいイメージを持って大会に臨まれていることが、随所に伺えます。
敗戦後、反省点を述べられる時でさえ、その内容はあくまで明るい未来につながるもので。その瞳は確信に満ちて輝き。
あぁ、この方の緊張感はとてもポジティブ。希望に裏付けされているんだなぁ。そう感じました。
同じ緊張感でも私の場合は…。ああなったらどうしよう。こうなったらどうしよう。そんな不安や怖れに裏付けされたもので、とてもネガティブ。自分を追い込んでしまいがちです。
私も森保監督のように、ああしたい、こうしたい、きっとできるはず。そのためにはどうしよう。そんな希望に裏付けされた緊張感に変換したい。そう思いました。
ついつい心に不安がよぎる時、恐怖にさいなまれそうになる時、「あかん、あかん、希望、希望!」。そう唱えながら、ありたい未来を描く練習をするこのごろです。
今年も残りわずかとなりました。至らないこと多く、年末の最後の最後まで反省しきりの一年でした。
それでも今年は春に10周年を迎えられましたこと(ブログ10周年)。秋以降、たくさんのお客様が戻ってきてくださいましたこと。それがなによりの喜びでした。心より感謝申し上げます。
来年は希望に裏付けされた、いい緊張感みなぎる私であれますように。そして森保監督のように、引き締まったいい顔になれますように。こちらは年齢と共にますます難しい(笑)。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
10周年
店のこと
2022年04月10日
ブログでのご挨拶が大変遅くなりまして申し訳ありません。先の3月16日、「しののめ寺町」は10周年を迎えることができました。ひとえに、日頃よりご愛顧いただいているお客様、お世話になっている取引業者様のお蔭です。ありがとうございます!
思い起こせば10年前、急に巻き起こった独立話からのバタバタの開店準備。そして、やっとの思いで迎えた初日の朝…。
毎日がその日のことで精一杯。考えられるのは、せいぜい翌日のこと。がんばって、やっと翌々日のことくらい。そうした一日一日を積み重ねて、積み重ねて、一年が二年に。二年が三年に…。
泣いた日、笑った日、途方に暮れた日、ブチ切れた日(笑)…。どの一日がなくても、今日には至らなかったのだと思うと、どの日もかけがえのない一日だったのだと、しみじみ思い返されます。
ローマは一日にしてならず
壮大過ぎてちょっとイメージが湧かない格言でしたが、今まさにこの気持ちです。
なにせ突然に飛び込んだ商売の世界。見るもの聞くもの全てが新しいことだらけの毎日。私にとりましてこの10年は、生まれたばかりの赤ん坊が10歳になるまでの年月に当たります。
皆さんは「もう10年? 早いねぇ」と口を揃えて仰います。が、私はとても長く感じています。子供の頃、一年は途方もなく長いものに思えたのと似た感覚かもしれません。
ところで、以前、京都で老舗と呼べるのは創業何年からか、なんて調査をするテレビ番組を見たことがあります。街頭インタビューなどを交え、面白おかしくする演出も多少あるのでしょうが、100年でもまだまだ、なのだとか。
結果、200年だったか300年だったか忘れましたが、何百年と伝統をつないでこられた正真正銘の老舗さんのご努力、ご苦労はいかばかりか。私などには想像もつきません。
うちでも、お客様から「このお店は古いのですか?」と尋ねられることがあります。その時々に「〇年です」とお答えするのですが、その際、お客様のお顔に微かに落胆の表情が…。
おそらく、100年、200年なんて答えを期待されていたのだと想像します。自分がお土産を買ったのは、そういう店であってほしいと思われるのは、特に京都なら当然かもしれません。
年数ではご期待に沿えませんが、召し上がったあとにご納得いただける店でありたいと願っています。
上記の写真は、通勤時、竹屋町通りから寺町通りを南に曲がってすぐに見える光景。右手、瓦屋根に看板が上がっているのが「しののめ寺町」です。
太陽は東の空まだ低く、お向かいの建物の向こう側。その合間から射し込む朝日が、うちの店にだけ燦々と当たっています。店名の「しののめ」は東雲(日の出)が由来でして。
「まさにしののめやぁ~」
って、心の中で叫びながら、思わず撮った一枚です。
開店前、物件を探していた時、すぐに出会ったこの場所。神様が用意してくださったのだと信じて疑わない私。それがどんな時も心の支えになってきました。きっとこれからも…。
世界にも、日本にも、これ以上悲しいことが起こらないことを心から祈りつつ、私にできること、私にしかできないこと。そうしたことを見つけながら、実践しながら、また一日一日、進んでいきたいと思います。
どうぞこれからも変わらぬご愛顧、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
フードコーディネーター紗矢香さん
店のこと
2021年07月08日
既にご覧くださっているお客様もいらっしゃるでしょうか? このホームページ内、おじゃこを使ったレシピをリニューアルしております。
大手食品会社の商品のパッケージに「レシピはこちらから」などと書かれたQRコードが印刷されているのを見かけることがあります。 スマホをかざすと、その商品を使った料理の作り方を見ることができる仕組みです。
意外な使い方を提案すれば新たな顧客を開拓でき、買った人も目新しい料理を楽しめる。 売る側にとっても買う側にとってもうれしいことですね。
大きな会社では専門チームがあり、たゆまぬ努力をされているんだろうなぁと想像します。
大それたことはできないけれど、うちでもこんなことができないかと、かねてから考えていました。
おじゃこはあたたかいご飯にかけるのが一番ですが、ほかにも色々な使い方ができます。 そんなレシピを店頭やSNSで発信したい。
私一人の力ではとても無理だけれど、フードコーディネーターさんがいてくださったら実現できるんじゃないか。 いつからか私の夢となりました。
前回のブログで書きましたが、昨年末から今年はじめにかけて、会員である中小企業家同友会の「実践塾」を受講。経営理念の成文化に取り組みました。 (ブログ経営理念)
この夢についても、その過程で何度となく口にし、紙に書き出していました。
言葉にすると叶う。 とはよく言いますが、たちまち叶ってしまった次第。 まさに実践塾マジック! 私自身が一番ビックリしています。
改めましてご紹介します。 フードコーディネーター、大澤紗矢香さん。 SB食品のコンテストで2年連続グランプリを受賞されたという実力者。願ってもないご縁です。
早速に提出いただいたレシピは、初回から驚きの連続でした。 とにかく写真がお上手で、料理がまるでそこにあるかのように美味しそう。 テーブルセッティングもお洒落で、食卓の語らいまで聞こえてくるような。
一眼レフのカメラで撮影されているとのこと。 本格的です。
作り方を見ると、食材も手順も少なく、簡単に作れそうなものばかり。 添えられたコメントには、その料理への愛が感じられ、いつも今夜にも作ってみたい思いに駆られます。
そして作ってみると、本当にどれも美味しい! しかも栄養バランスも優れていてヘルシー。
なにより感心するのは、あくまでも、おじゃこを引き立てる料理であることを第一に考えてくださっていることです。
肉料理、野菜料理、和風、洋風、エスニック…。 バラエティに富んだ味付けながら、どれもおじゃこの持ち味が生かされていて、おじゃこだからこそ生まれた味わいが、しみじみと感じられます。
そこに行き着くまでに、どれだけの試行錯誤があったろうとお察ししますが、その過程がまた楽しいと仰る紗矢香さん。 常に研究熱心で、仕事に向かわれる時の謙虚で真摯な姿勢に、いつも頭が下がります。
そのレシピ、料理初心者の方でも迷ったり思い違いが生じないよう、とても丁寧に説明されています。 小説は行間を読むと言いますが、紗矢香さんの文章も然り。 これから作ろうとする人への配慮や思いやりが行間いっぱいに溢れているのが読み取れます。
そんな丁寧な説明も、SNSに載せる際には字数の関係もあり省略してしまうことがあるのが、心苦しいところです。
というわけで、【勝手に命名フードコーディネーター紗矢香さんの素敵☆おじゃこレシピ】と銘打ってインスタグラムやフェイスブックでも発信しています。
これらのお料理、もちろん「しののめ寺町」のじゃこ山椒で作っていただいています。 小ぶりで柔らかく、あっさり薄味のうちのおじゃこだからこそ、いろいろな食材とよく馴染むんだなぁと思います。
うちのおじゃこでレシピ通り忠実に作っていただければ間違いありませんが、必ずしもそうでなくてもいいと思っています。 よそのお気に入りの店のものでも、ご自身で炊かれたものでも。 とりあえず試してくださることが一番です。
ただ、口当たりや味の具合は変わると思いますので、そのあたりはそれぞれに調整されてはと思います。 紗矢香さんのレシピをヒントに、その方だけのオリジナルレシピが生まれるのも、またいいですね。
長年「ほぼ専業主婦」だった私。 手の込んだものもなんのその。 毎日テーブルいっぱいに料理を作ってきました。 それも今は昔。 店を始めてからはとにかく単調な手抜き料理の繰り返し。
姿を消したレパートリーは数え切れない一方で、新しいレパートリーを開拓する気など毛頭なく。
それが紗矢香さんのレシピに出会ってからは、初めての料理にトライするのが楽しくって仕方なくなりました。
ある時、ハンドミキサーが必要なレシピがありました。 お菓子作りなどしなくなって何十年。 道具一式を段ボールに詰めて高い棚のその奥にしまいこんでいたのですが… 。
踏み台に乗って取り出し、久し振りに日の目を見たハンドミキサー。動くかと心配しましたが、ちゃんと動いてくれました。 なんだか誇らしそうなハンドミキサーを眺め、私もうれしい気持ちに。仕上がった料理も、とっても美味しいものでした。
長引くコロナ禍のみならず、なにかと閉塞感いっぱいの今。紗矢香さんのレシピは、私の大きな癒しになっています。クリエイティブなことって、やっぱり楽しい!
こうした思いも一緒に多くの方に届けられたら、と思うのですが。まだまだうまくお伝えし切れていないのが歯がゆいところです。
うちが超有名店なら出版のお話が舞い込んでもおかしくないかも、なんて思ったりします。「〇〇の料理帖」みたいなタイトルで、装丁まで目に浮かぶよう(笑)。
全レシピが、じゃこ山椒を使った料理本って、これまでにあったでしょうか。どのページをめくってもおじゃこ尽くし、なんて本。京都らしくっていいと思うのですが。
家族の団らんでも、一人暮らしの食卓でも、小さなお子様からご高齢の方まで、さまざまな生活場面で活用していただけるおじゃこレシピ満載の一冊。おじゃこの可能性を広げ、食の楽しさを届けられる。そういう本ができたらいいなぁ。
紗矢香さんの素敵なレシピを眺めながら、そんな夢がふくらむこのごろです。
引き出しをいっぱいお持ちの紗矢香さん。まだまだ新しいレシピが生まれていく予定です。一人でも多くの方に知っていただけるよう、私も努めていきたいと思っています。
インスタグラムのアカウントはshinonome_teramatiです。ご覧になれる方は、ぜひフォローをよろしくお願いします!
追記:2022年、オリジナルレシピの提案を中心とする「UTUCIKI」を立ち上げられました。そちらのホームページもぜひご覧ください。
経営理念
店のこと
2021年05月30日
今回はなんとも堅いタイトルになりました。といいましても、この私に難しいことなど書けるはずがありません(!)。どれどれ? って感じでお付き合い願えたらと思います。
以前にこのブログでも書きましたが、縁あって中小企業家同友会という会に所属させていただいています(ブログ中小企業家同友会)。
中小企業と一口に言いいましても、一人でされている方から、多くの社員を抱えておられるところまで。業種や形態も実にさまざまです。
ただ一つ共通点があるとしたら、誰もが懸命に事業に取り組んでおられることでしょうか。
その片隅でひっそりお話を伺えればいい。そう思って入会したのですが…。
ここでは規模や年商、年齢や経験に関係なく、一人の会員として誰もが平等に尊重される。そのことにまず驚きました。
以来、店の運営をしていくうえで、常によりどころとしてきた場所。気づけば7年になります。
事業を継続、発展させていくうえで、経営理念は欠かせないものとよく聞きます。全社員が力を結集して迷うことなく進んでいくための道しるべのようなもの、とか。
経営理念のある企業は、ない企業に比べ、業績がすぐれているというデータまであるそうです。
中小企業家同友会でも経営理念はとても大切なものと位置づけられています。というわけで、まだない会員には、先輩会員がサポーターとなって成文化まで漕ぎつける。という活動が伝統的に行われています。
年に一度、半年ほどかけて行われるプログラム。その名も「実践塾」です。
気になりながらも、なんだか難しそう。営業時間と重なることもあり、これまで踏み切れずにいました。
けれど潜在的な経営課題に加え、想定外のコロナ禍の襲来。今こそ、との思いで、昨年秋から始まる実践塾に参加することを決意しました。
小グループに分かれて進められていくのですが、初回の顔合わせからビックリ。家族でもないのに、友達でもないのに、どうしてここまで一生懸命になってくださるのかと。
事業を続けることの難しさと喜び。そのどちらをも、よくよくご存じの皆さんだからこその熱い思いなのでしょう。
これはもう、私も真剣に応えなければいけない。そう覚悟を決めてスタートしました。
長年にわたって練られてきたカリキュラムは、私などが言うのも失礼なことですが、それはよくできたものでした。毎回、与えられる課題は、様々な切り口から自社を分析し、考えを深めていけるよう組み立てられています。
まずは自分史から。誕生から今日までを振り返るなかで、自分が大切にしてきたことが、改めて浮き彫りになっていきます。かけ離れているようで、経営の基本はここにあるのだと再認識させられる課題です。
以降も、個として、あるいは社会的なものとして、自分や自社の存在意義を考えたり。夢を膨らませる一方で、電卓叩いてひたすら現実を直視したり。
さまざまな次元、時間軸を行きつ戻りつ。頭を打ってまた振り出しに…。
そして最後は、自分はどう生きたいのか。そのための事業のあり方はどういうものなのか、との問いにとことん向き合うことになります。
事業の数だけドラマがあるんだなぁ。
もともとあった店から独立という形でスタートした「しののめ寺町」。正直、既に軌道に乗っているものを、そのまま持ってくればいいのだと、安易な気持ちがあったことは否めません。
現実はそんな甘いものではないばかりか、独立だからこその難しさと葛藤。そうしたことを今一度、整理したい。実践塾に参加を決めた一番の目的は、これでした。
変えていいこと。
変えてはいけないこと。
変えなければいけないこと。
創業者の思い。
自分たちの思い。
お客様の思い。
一筋縄ではいかない難しい作業。私自身はもとより、それに付き合ってくださるサポーターさんもまた大変なことだったと思います。親身に寄り添うほどに、苦言を呈さなければいけないことが出てくるわけですから。
自分では気づかないこと。気づきながらもそのままにしてきたこと。痛いところを鋭く指摘され、たじたじとすることしばしば。
そんな真剣勝負のやり取りを繰り返し、最後の最後、取り散らかっていたジグソーパズルの残りの一片がパチンとはまった気がしました。
そして10項目にわたって取りまとめた経営指針書が、今年の春に完成しました。その中の最重要項目、経営理念を以下の五つとしました。
手作りの伝統の味を守ります。
食べることの楽しさと幸せを届けます。
調和ある職場環境を整えます。
地域に根差し、地域と共に発展するよう努めます。
誰もが尊重される世の中になるよう貢献します。
未熟ながら、納得して決めたことです。が、実践するのはどれも難しい。本当に難しい。はたして私たちにやっていけるんだろうか。自問自答のこのごろ…。
今年は、自分を試す年、試される年になりそうです。
サポーターさんはじめ、ここまで支えてくださった多くの同友会会員ならびに職員の皆様には、感謝の思いでいっぱいです。
事業を行うものとしてだけでなく、人として、この会に出会えてよかった!
そんなこんなの「しののめ寺町」ですが、どうぞこれからも温かく見守ってくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。