感性

お友達のこと

2019年03月30日

店を始めてよかったと思うことは数えきれないくらいあるのですが、一方で、ちょっと残念に思うことも少しばかり。

その一つが、友人と会う時間を持てなくなったことです。なかでも、遠方の友人や仕事を持っている友人と会うのは特に難しく、つい疎遠になりがちです。

そんな友人の一人が、このブログでも何度か紹介している一恵ちゃん。店に飾っている写真を撮ってくれているカメラマンです(ブログ一恵ちゃん 一恵ちゃん2)。

京都と神戸、近いと言えば近いのですが、休みが合わなかったり、所用が続いたり。いつからか互いの誕生日プレゼントを交換するようになったのですが、渡せるのはいつも何カ月かのち。それでもプレゼントを渡すことが、なんとかして予定を調整する原動力になっています。

私の誕生月は1月。早くプレゼントを渡したい、というラブコールをもらいながら、早3月。3月も既に予定が詰まっていて、これはもう4月に突入か、と思ったある朝…。店に着いてメールを開くと、「今から行くね!」のメッセージが届いていました。

えぇ~!!! 

休みが合わないなら店に直接、と思ってくれたのでしょう。あまりのサプライズに、朝からそわそわ。まもなく現れた彼女に、思わず抱擁の対面となりました。さっそく手渡されたプレゼントを開けてみると…。

現れたのは上の写真。一枚目のマニキュアの絵柄にまず絶叫してしまいました。一枚めくって、また絶叫。さらにめくって、また絶叫。計四枚、10cm角の小皿が組みとなって収められていました。斬新な配色。エキセントリックな構図。なんて刺激的で、魅力的。鳥肌が立つくらい、一目で気に入ってしまいました。

写真をやっている彼女の感性はいつも研ぎ澄まされていて、一緒にいると驚かされることばかりです。その彼女が「ひろみちゃん(私です)のプレゼントはこれしかない!」と一目惚れで選んでくれたのだとか。私の好みをピンポイントで突いてくる、彼女の感性はやっぱり凄かった。

大騒ぎのあと抜け出して一緒にランチ、といけば最高なのですが、そうもいかず。ならばと、前から食べたいと思っていた、ご近所「シェ・ラ・メール」さんの苺サンドを買ってきて、店奥で事務室ランチとなりました。大粒の苺が丸ごと挟まれた、驚きの見た目と美味しさに、これはこれで大盛り上がり。一緒にいると、なにをしていても楽しい二人です。

接客と電話の合間にマシンガントーク。とにもかくにも互いの近況を確認し合って、名残を惜しみながらお別れとなりました。

彼女が帰ったあとも興奮冷めやらず、絵皿を飽かず眺めていました。

彼女とはいつも、思いや好みを素直に語り合い、お互い固有の感性を尊重し合ってきました。だからこそ、私の好みにドンぴしゃのものを選んでくれたのだと思います。だとしたら、このプレゼントはまさに私の感性そのもの…。

ふと、自分の内にある「感性」というものを、彼女が取り出して、形にして見せてくれた気がしました。あなたの感性はこんな感じだよ、ってニコニコして。

自分を俯瞰して眺めているような、不思議な感覚に陥りながら、こんな思いが溢れてきました。

感性って、心の中に誰もが持っている原石のようなものなんじゃないか。生まれた時に、一人に一つずつ、神様があてがってくださるギフト。一人として同じものはなくて、どれもがたった一つの宝物…。

子供の頃から、自分はひとと違っているという感覚がいつもありました。良いことにつけ、悪いことにつけ、人一倍、感じ過ぎてしまうような。ひとから「豊か」と言われることもある自分の感性を、時に持て余しながら付き合ってきた気がします。

絵皿を眺めながら、こういう物を好きな自分、こういう感性の自分っていいな…。初めて、そう思いました。私だけの原石、磨くのは自分自身。輝かせるのも、鈍らせるのも自分次第。大切に守っていかなくちゃ。

絵皿はもとより、そう気づかせてくれたことが、なによりのプレゼントとなりました。彼女には感謝の思いでいっぱいです。

その日はうれし過ぎて、はしゃぎ過ぎて、熱が出そうでした。子供かぁ、って自分にツッコミを入れながら、そんな子供みたいな感性もまた大切にしていきたいな。そんなことを思った夜でした。

こんな私でありますが、今後ともよろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。

一恵ちゃん 2

お友達のこと

2017年04月27日

今年の京都は桜の開花が遅く、開花後も肌寒い日が続いたため、例年になく長くお花見を楽しめた春でした。皆様は、どのような春を迎えておられるでしょうか。

 

「しののめ寺町」の壁に掛けられた写真も、この季節は桜。5年前の開店の年に、友人が自ら撮っては、四季に合わせて贈ってくれたものです。カメラマンは「一恵ちゃん」。アマチュアながら受賞経験豊富な実力者。私と同い年の女性です。モノクロが得意なのですが、店が明るくなるようにと、珍しくカラーで仕上げてくれました(ブログめぐる季節のなかで)。

 

彼女のグループ展が神戸であるということで、先日、出かけてきました。お互い仕事でなかなか会えず、その日もわずかな時間だけ。それでも、だからこそ、目いっぱい楽しい時間を過ごしてきました。

 

彼女と初めて会ったのは、もう十数年前、当時、通っていたテニスコートでした。といっても、いつもすれ違い。ある時、ふとしたきっかけで始めた立ち話が、とてつもない長話に(笑)。波長が合うというのは、こういうことなのでしょうか。さっそくランチの約束を。

 

数日後、気楽なレストランでの初めての会食。まず出てきたオードブルが、カラフルな野菜で彩られた一皿でした。グラスには冷えた水が。よく晴れた昼下がり、たっぷりの光が窓から射しこんでいました。

 

さぁ食べよう、という時に…。写真に熱中しているという彼女。食べるのはそっちのけで、お皿を傾け、グラスを掲げ、光の当たり具合を私に見せながら、写真には光がどんなに重要かを語り始めました。すると野菜はますます色鮮やかに、グラスについた水滴は煌めきを放って見えてきました。

 

子育て中だった頃のこと。同じくらいの年齢の女性との話題は、どうしても子供のこと、家庭内のあれこれになりがちでした。こんな話を、こんなにも一生懸命にするひとがいる…。正直なところ、主婦トークがちょっと苦手な私。驚きと感動の入り混じった思いで、目をキラキラと輝かせて語る彼女の顔に見入っていました。

 

ようやく話が一段落したところで、「こんな話をするひと、初めて!」と吹き出す私に、「こんな話をひとにしたの、初めて!」と吹き出す彼女。二人で大笑いしたあと、やっと食事が始まりました(笑)。

 

こうして仲良くなった私たち。彼女が出品する写真展には、出来る限り足を運ぶようになりました。「きれい」とか「素敵」とか、そんな言葉では表し切れない彼女の写真。ぞわぞわと掻き立てられるものがあり、見るたびに新境地を拓いていく…。あくまでも一人の鑑賞者として、私はカメラマン「一恵ちゃん」の一番のファンだと自認しています。 

 

残念ながら、転勤族の彼女は、まもなく京都をあとにし、各地を転々とすることに。何年も会えない時期もありましたが、交友は途切れることなく続き、今日まで、共に年齢を重ねてきました(ブログ一恵ちゃん)。

 

その間、一貫して写真一筋だった彼女。それに引きかえ、ああでもない、こうでもないと、模索ばかり続けてきた私。「しののめ寺町」開店を機に、遅ればせながら、やっと肩を並べられた気がしています。

 

もう年だから…、そんな言葉をよく耳にします。店を始め、決してそうではないと思うようになりました。年齢を重ねるごとに積み上げられていく経験は、何歳になっても人を成長させ、豊かにしてくれる。衰えていくものはたくさんあるけれど、それでも人は進化し続けられる。そう信じています。

 

彼女の写真を見ていると、その思いが間違いでないことを確信します。今回の写真もまた、これまでにはなかった新しい感性が吹き込まれ、新しい世界が拓かれていました。写真の向こうに、進化し続ける彼女が見えます。

 

名残を惜しみ、飛び乗った帰りの電車の中。今回の写真は、私には相当、刺激的だったのでしょうか。心の昂ぶりを抑えられずにいました。彼女は一体、どこを目指しているんだろう。どこに行きつけば満足するんだろう。そんなことを考えながら…。

 

きっと、どこまでいっても終わりはなく、いくつになっても、なにかを追い求めているんだろうな。初めてのランチの時みたいに、目をキラキラ輝かせながら。

 

私も負けないぞぉ。

 

慌ただしくて、お花見らしいお花見もできなかった今年の春。車窓から、名残の桜を眺めながら、そんなことを思った私でした。

富士屋ホテルの紅葉

お友達のこと

2014年12月04日

今年の紅葉の季節、皆様、どのようにお過ごしだったでしょうか。

 

お客様からお話を伺いながら、あちらこちら行った気に、見てきた気になる、というのが開店以来の私の行楽スタイルですが、紅葉もしかり。自称、妄想もみじ狩りで、今年もたっぷり楽しませていただきました(笑)。

 

そんな私ですが、以前は方々出かけたものです。印象深い紅葉のスポットはたくさんありますが、なかでも忘れ難いシーンが。

 

数年前、長男が東京に住んでおり、私もたびたび上京する時期がありました。その際に横浜在住の女性と知り合う機会が。私より10歳ほど年上で、とにかく笑顔が素敵。話すうちに、独身で、定年を前に退職し、夢実現に向けて勉強の日々を送られていることがわかりました。

 

女きょうだいのいない私は、素敵な女性を見ると、こんなお姉ちゃんがいたらなぁと、すぐになついてしまう変な癖があります(笑)。まさにそんな方で、あっという間に意気投合。長男が京都に戻ってからも交友は続き、めったに会えなくなった今も大切な存在です。

 

4年前のちょうど紅葉の季節、会いたくなって連絡すると、ぜひうちにと泊めてもらうことになりました。素敵なプランをあれこれ立てて迎えてくれたのですが、なかでも一押しが箱根でした。

 

二日目の朝早くに家を出て、まずは箱根湯本で日帰り温泉。長らく友人とお風呂に入る経験のなかった私は、ちょっとどぎまぎ。けれど全く平気な彼女につられてすぐに平気に。まさに裸のお付き合い。昼食においしいおそばをいただき、あとは登山電車で宮ノ下へ。「富士屋ホテル」のティーラウンジでお茶をすることを、彼女はとても楽しみにしている様子でした。

 

ホテルに着いた途端、彼女の思いがすぐに理解できました。老舗ホテルらしい風格あるたたずまいは、それはそれは素晴らしいものでした。ただ時期が時期、大変な混雑で、ずいぶん長い順番待ちとなりました。その間、建物のなかをぶらぶらし、宝塚歌劇ばりの階段を上ったり下りたり。庭を散策して紅葉をバックに写真を撮ったり。ロビーの椅子に腰かけて、行き交う人をぼんやり眺めたり…。普段ならイライラする待ち時間も苦になりませんでした。

 

ようやく案内されて店内に。やはり待ちくたびれていたのでしょうか、席について名物のシュークリームとコーヒーを注文すると少しほっこり。落ち着いた調度品から漂う空気感。窓から見える庭の景色。遠くロビーから聞こえるざわめき。コーヒーの馥郁(ふくいく)とした香り。シュークリームの濃厚な甘さ、なめらかな舌触り…。私は五感のすべてが満たされていく心地よさに浸っていました。彼女も同じことを感じていたのでしょうか、ふたりの会話も静かなトーンに。やがて寡黙になっていったような。

 

見る間に窓の外は夕闇に。素敵な空間で素敵なひとと過ごすひととき。とても濃密で上質な時間でした。ふと、私はきっとこの光景を繰り返し思い出すだろうと思いました。おばあさんになっても繰り返し、繰り返し思い出すだろうと。

 

夢が実現したら、ここにお泊りの招待するからね、とは彼女からの提案です。その時は遠慮なくお言葉に甘えさせていただきます、と私。実現の日を今も楽しみに待っています。

 

二泊のお世話になる間、至れり尽くせりのもてなしをしてもらったうえに、帰りには山のようなお土産まで用意してくれていました。手作りのお味噌にクッキー、その朝に焼きたてのバナナケーキ、そして富士屋ホテルで買っておいてくれたアロマキャンディ。正直、相当重い荷物となりましたが、まるで実家に帰省したような温かい思いの帰り道でした。

 

走馬灯のように思い出される、という表現がありますが、私はかるたの絵札をばらまいたように、という表現がしっくりきます。素敵な思い出の一場面一場面が、かるたの絵札の一枚一枚となって床一面を覆いつくす感じ。

 

こんな素敵な絵札をこれからも集めていきたい。どの一枚を取っても幸せなひとときがたちまち蘇る、そんな絵札を集めていきたい。一枚でも多く…。そんなことを思う今年の紅葉の季節でした。

一恵ちゃん

お友達のこと

2014年07月08日

7月になりました。一年の半分が済んだことに。早いですねぇ、と書くところですが…。

 

店を始めて以来、時間の経過をとても長く感じるようになりました。うれしいことにつけ、大変なことにつけ、毎日、たくさんの新しいことが起こるせいでしょう。頭や心の整理がつく間もなく、現実が先へ先へと進んでいくようです。一ヶ月前、一週間前のことでさえ、ずいぶん昔に思えることも。

 

とりわけ先月は様々なことが盛りだくさんの月でした。おのずと心身ともに高い緊張状態にあったようです。6月に書いたブログ3編(店を構えるということ 中小企業家同友会 プロ意識)はタイトルだけ見ても相当に力が入っている様子が伺えます(笑)。

 

その6月最終の定休日は友人と会う約束になっていました。「しののめ寺町」の壁を飾る写真を撮ってくれているカメラマンの一恵ちゃんです(ミニミニギャラリー)。出会ったのは十数年前、偶然にも同い年、お互い主婦ながら主婦トークが苦手という共通点でたちまち意気投合して以来の仲です。

 

相当に疲れた様子の私に、心配した彼女が延期を提案してくれましたが、こういう時こそ会いたいと出かけて行きました。場所はアサヒビール大山崎山荘美術館、レトロな洋館と安藤忠雄氏による近代建築が見事に融合した、高台に建つ素敵な美術館です。ちょうど魅力的な展覧会が開催中でした。

 

鑑賞の合間に革張りのソファーにどさりと腰かけると、時間がゆったり流れていくよう。黒光りする太い柱や梁を見上げ、ええ感じやなぁ、と話し。窓のカットガラスが光を受けて虹色に輝くのを眺め、プリズムみたいやなぁ、と話し…。こんな風に心が動くのは久し振りのことでした。

 

バルコニーに出ると、眼下に広がるのどかな風景が遠くまで見渡せました。こんな遠くに視線をやるのは、いつ以来でしょう。ふだん何十センチ、せいぜい何メートルの範囲を見て暮らしているんだなぁ、としみじみ。

 

見上げると、梅雨の晴れ間の青空に、雲がぽっかりふたつ浮かんでいました。2匹のネズミが追っかけっこしているみたい。見れば見るほど生きているようで、かわいいこと、かわいいこと。雲を眺めて大盛り上がりしてしまいました。そういえば二人で出かけると、よく空を見上げては、おもしろい形の雲を見つけたものです。(ブログめぐる季節のなかで

 

いつも五感を研ぎ澄ませて暮らしている彼女。私がふだんフル稼働しているのとは、また違った五感を呼び覚ましてくれたようです。なにもかもが新鮮に思えた休日でした。胃の調子が悪くて、せっかくの美味しいカフェごはんを食べきれなかったのだけが心残りでしたが…。

 

その夜、彼女から「この雲を見て、かわいい! かわいい! って感動していた大好きな友へ」と写真を添付したメールが届きました。「昔のように、いつでも空を見上げてね♪ 気持ちが元気になるよ」とコメントを添えて。

 

友達って、ありがたい…

 

翌朝、体調も回復、朝食を美味しくいただけました。自宅で休養するより、心も体もずっとリフレッシュできたようです。

 

生活が激変した私を、冷や冷やしながら見守っているという彼女。かけてくれる言葉はいつも「大丈夫?」です。出来ることはなんでもするよという言葉に甘えて、最近ではポストカードまで作ってもらいました。心配をかけ、頼ってばかりの私です。

 

まだまだ安心してもらえそうにありませんが、せめて空を見上げて、心のバランスだけは保っていこう。かわいい雲の写真を眺めながら、そう誓った6月の終わりでした。

さよちゃん

お友達のこと

2012年12月13日

かわいい絵本が届きました。作者はさよちゃん。私が学校を卒業後、勤めていた保険会社の同期だった女性です。

 

ずいぶん昔のことですが、当時、京都支店に同期入社の女子社員は20人ほど。そのなかでも、さよちゃんは、とびきりに溌剌とした可愛い女の子でした。そんなイメージとは裏腹に、入社後まもなく発病、退社を余儀なくされました。以来、病とは縁の切れない生活だったようです。

 

だったよう…というのも、いつの間にか、さよちゃんとは疎遠になってしまい、同期の誰も、さよちゃんの近況はわからないという状況になっていました。 子育ても一段落したこのごろ、同期会が復活。さよちゃんも最近になって結婚されたとのこと、同期会にも参加すると返事があった矢先、突然、亡くなってしまいました。絵本のあとがきを書いた数日後、絵本の完成目前のことです。

 

会社のパーティーで、スタンドマイクでキャンディーズを披露したさよちゃん。入社後初めての夏、同期で出かけた白浜の保養所で、はち切れんばかりのビキニ姿を披露したさよちゃん。食べることが大好きで、なんでも「おいしい、おいしい」と言って食べていたさよちゃん。思い出されるのは二十歳の頃のさよちゃんばかり。まさに絵本の表紙に描かれた、主人公ジュリアンそのままです。

 

自分が結婚、出産としていくなかで、さよちゃんと連絡を取るのは、はばかられるような気がしていました。けれど、今思うと、それは言い訳に過ぎず、水臭いだけでした。状況はそれぞれに違っていても、付き合っていくことは出来たはずです。年相応に老けたさよちゃんにも会いたかったと悔やまれます。

 

絵本のあとがきには、家族やまわりへの感謝の言葉が述べられ、その横には青々とした双葉の挿絵が描かれています。病という理不尽な運命の中にあっても、さよちゃんは、みずみずしい心を持ち続けたんだなぁと想像します。

 

   夢を持ち続けていたら

      きっといつか叶うから

 

あとがきの最後、こう締めくくられています。

さよちゃん、ありがとう。そして、ごめんなさい。

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