この道を 通る日いつも 豆腐買う
店のこと
2012年06月02日
うちにご来店くださるお客様の半数近くは他府県の方でしょうか。観光の方がほとんどですが、なかには京都の病院に通っているという方が時々いらっしゃいます。
近郊から月に一度通院しているという方、遠方のため京都に部屋を借りているという方、なかには入院中で外出許可をもらってきたという方も。
ご本人は食事制限があり食べられないけれど、家族にと言って、じゃこ山椒を求められる姿に、かける言葉が見つかりません。
今はもう亡くなった私の実母は、長年、入院生活を送っていて、私は一人、慣れない運転で面会に通いました。
私が娘であることをとうに忘れた母に会うのは気の思いことでしたが、途中に美味しい豆腐屋さんがあり、帰りに買って帰るのがせめてもの慰めでした。夏には冷奴、冬には湯豆腐にして食べた豆腐は、美味しくも切ない味でした。
「おいしい、おいしい」
と、ことさら声に出して食べていたように思います。
病気は本人にとっても家族にとっても辛いものですが、そんななかでも人はちょっとした隙間に楽しみを見つけられるものなんですね。
この道を 通る日いつも 豆腐買う
思いのままを五七五にして新聞の川柳に投稿したところ、佳作に選ばれた、なんてことも。ビギナーズラック、ってやつです。
決して楽しくはない病院通い、それでも皆さん、なにかしら楽しみを見つけられている様子がうかがえます。
写真は近くのスーパーの軒先で見つけたツバメの雛。たくましい生命力、あやかりたいものです。
つるやのサラダパン
店のこと
2012年05月20日
3月21日のブログで書いていますが、私、滋賀県の湖北、木ノ本の観音様が大好きなんです。
地下鉄の駅を降りて竹屋町通りを店に向かうとき、正面に西国三十三カ所巡りの19番札所、通称「こうどうさん」が見えます。毎朝、心の中でそっと手を合わせ、木ノ本の観音様のことを思います。
またゆっくりと訪ねたいと思いながら、まだ時間がつくれずにいます。
私が木ノ本好きなことを知る友人が、きのう、木ノ本までドライブしてきたと、店にお土産を届けに来てくれました。袋をのぞくと、「つるや」の「サラダパン」が!
木ノ本の北国街道沿いに古くからあるパン屋さんの名物パンです。少し甘めのコッペパンの切り目にマーガリンが塗ってあり、そこにマヨネーズで和えた刻んだたくあんが挟んであるんです。そう、漬物のたくあんです。
パンにたくあん、なんてアバンギャルドな取り合わせでしょう。知らずに初めて食べたときは仰天しましたが、これが病み付きになる美味しさなんです。
久々に食べたつるやのサラダパンは変わらぬ美味しさで、
「ああ、これこれ」
と、うれしくなりました。
風情ある街道の佇まいや、昔懐かしい雰囲気の店内の様子まで目に浮かぶから不思議です。
「しののめ 寺町」も暖簾分けから2ヶ月。
馴染みのお客様が、ご試食用のじゃこ山椒を一口召し上がり、
「これこれ、この味」
と言ってくださるのを聞くと、ほっとします。
そして、お客様がよく仰るのが、
「このあたり、風情のある街ですね」
という言葉。
変わらぬ美味しさを。
そして、うちのじゃこ山椒を召し上がっていただくとき、寺町の風情ある街並みを思い出していただける。
そんな店になれる日を夢見ています。
いまわの言葉
店のこと
2012年05月16日
開店して今日でちょうど2ヶ月が経ちました。一軒の店を軌道に乗せることの難しさを痛感しています。当たり前といえば当たり前のことですが。
「自分で自分をほめたい…」
と言ったのは、マラソン選手の有森祐子さんでしたっけ。
42,195kmを走り終え、メダルを獲得したのですから、日本中が納得の喝采を送ったものでした。
「私、結構、頑張ってるんやけどなぁ」
と思うこともありますが、仕事もプライベートも、なにぶん結果が出ないことには自分をほめるわけにいきません。叱咤激励ばかりの毎日です。自分をほめられるような日が、いつになったら来るのやら。
それでも人生最後の日には、結果はどうあれ、自分をほめようと決めています。
渾身の力を振り絞り、「ようやった!」と自分に声をかけてやりたい。
その日まで、不本意な途中棄権をしないよう、時には歩いたり、給水したりしながら、ゴール目指して邁進していく所存です。
贈り物日和
店のこと
2012年05月10日
子供の日が終わって、次は母の日でしょうか。
デパートやテレビコマーシャルでは、母の日、母の日と賑やかです。
お母さんのいない子供もいるだろうに、子供のいない女性だっているだろうにと、この時期なんだか気分が悪くなるのは、私が天邪鬼のせいでしょうか。
そんな私も店を開き、やっぱり「母の日企画」をしています。(~_~;)
店頭で商品を選ばれるお客様、袋入りを一つ手に取り、
「ああ、○さんにも」
と言って、もう一つ。
「そうそう、△さんにも」
と言って、さらにもう一つ。
なんてことが、ままあります。
人って、物を贈ることが好きなんだなと思います。
喜んでくれる人の顔を思い浮かべるのは、贈る側にとっても楽しいことです。
思えば一年365日、毎日が贈り物日和かもしれません。
5月13日、母の日にかかわりのある人も、ない人も、それなりの一日を。
食卓の記憶
店のこと
2012年05月05日
今日は子供の日。
地下鉄を降りて店に向かう途中に、京都市の子育て支援総合施設「こどもみらい館」があります。いいネーミングだなと、いつも思うのですが、今、大きな鯉のぼりが掲げられ、ますますいい感じです。
じゃこ山椒って、子供さんは苦手かと思いきや、意外にも好評です。
「もっと、ちょうだーい」
と、ベビーカーから試食用のじゃこ山椒をリクエストするお子さんも。
「子供たちが大好きで」
と、たびたび買いに来てくださる若いお母さんもいらっしゃり、賑やかな食卓が目に浮かぶようです。
私は子供の頃、食が細く、好き嫌いも多くて、自宅でも学校の給食でもいつも居残り組でした。そんな記憶は、今もトラウマとなって残っています。
彼ら、彼女らの幼い日の楽しい食卓の記憶に、うちのじゃこ山椒がわずかでも花を添えることができたなら、こんなうれしいことはありません。
私がおばあさんになり、
彼ら、彼女らが大きくなって、
「わたしゃ、あんたたちが、こんなちっちゃい頃から知っているんだよ」
(突然、ちびまるこちゃんのおばあちゃんの口調になる)
なんて言っている光景を妄想して、一人、ほくそえんでいます。