フェイスブック デビュー

お友達のこと

2012年05月02日

「フェイスブック、やってる?」

最近、よく聞かれます。

先延ばしにしていましたが、ついに登録しました。

状況のつかめないまま手順を進むと、いつのまにやら回りの扉という扉が開いていたという感じでしょうか。その向こうで多くの人が笑顔で待っていてくれる。一歩踏み出せば友達になれるし、待っていても友達が訪ねてきてくれる。不思議な世界です。

この感覚、実は開店以来抱いていた感覚と似ています。

何年来、会っていない知人が訪ねてきてくださる。

紹介されたといって、知人の家族や友人の方が来てくださる。

偶然来てくださったお客様が、遠い親戚に当たることが判明したことも。

開店によって、なにか扉が開け放たれたような。

友達の友達は皆友達、世界は一家、人類皆兄弟、みたいな。

人づきあいは難しいなと思うこともありますが、やっぱりおもしろい。

「フェイスブック、やってる?」

これからは、私の方が聞いているかもしれません。

廃屋

素敵な女性

2012年04月25日

店にいる時間の方が長くなり、どうしても家のことは後回しになります。

今日は定休日、でもやっぱり、店のことで一日過ぎていきました。

辛うじて午前中、家の用事をしたのですが…。

あれあれ、拭けば取れていたはずの汚れがこびりついて取れないは、強いはずのサボテンがぐじゅぐじゅになっているは、家中がなんだか不機嫌です。

愛人宅に入り浸って、久々に本宅に帰ると、家族がみんなそっぽを向いている。

「どちらも愛しているんだよ」と言い訳にならない本音を漏らす男性の気持ちがわかるような…。

そんななか、ほったらかしにしていた鉢植えからこんな見事な花が。

少し救われました。

家事労働は世の中に全く認知されていませんが、まさに真剣勝負、隙を見せたらたちまち、やられます。

前回に続き、私の好きな茨木のり子の詩を一つ。タイトルは「廃屋」です。

 

人が

棲まなくなると

家は

たちまちに蚕食される

何者かの手によって

待ってました! とばかりに

 

つるばらは伸び放題

樹々はふてくされて いやらしく繁茂

ふしぎなことに柱さえ はや投げの表情だ

頑丈そうにみえた木戸 ひきちぎられ

あっというまに草ぼうぼう 温気にむれ

魑魅魍魎をひきつれて

何者かの手荒く占拠する気配

 

戸さえなく

吹きさらしの

囲炉裏の在りかのみ それと知られる

山中の廃居

ゆくりなく ゆきあたり 寒気だつ

波の底にかつての関所跡を見てしまったときのように

 

人が

家に

棲む

それは絶えず何者かと

果敢に闘っていることかもしれぬ

 

家事労働を侮るなかれ。

自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ 

素敵な女性

2012年04月22日

開店してから一ヶ月が経ちました。

少しずつ整ってきたところもありますが、大半はまだまだ模索中です。

休日もあれやこれや奔走し、休日にはなりません。起業したが最後、仕事とプライベートの切り分けは難しいのでしょう。家族でやっていると、なおさらです。

「静かなところで、一人、頭を空っぽにして、のんびりしたいなぁ~」

そんな言葉が口をつきそうに…。

弱音を吐きたくなったとき、心に浮かぶ言葉があります。

自分の感受性くらい  自分で守れ  ばかものよ

詩人 茨木のり子の詩「自分の感受性くらい」の一節です。

かかりつけの接骨院の待合室の本棚で偶然見つけ、以来、私のバイブルになりました。自分を鼓舞するために、全文、書いてみます。

 

ぱさぱさに乾いていく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

 

気難しくなってきたのを

友人のせいにはするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか

 

苛立つのを

近親のせいにはするな

なにもかも下手だったのはわたくし

 

初心消えかかるのを

暮らしのせいにはするな

そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 

駄目なことの一切を

時代のせいにはするな

わずかに光る尊厳の放棄

 

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ

 

ぐうの音も出ません。 

はじめまして ル・クルーゼ

店のこと

2012年04月15日

開店日前日になって、試食用のじゃこ山椒と塩昆布を入れる器を買い忘れていることに気づきました。幸い貸してくださる方があり、当面お借りすることに…。

先日、ようやくデパートに買いに行くことができました。食器売り場で探すも、ピンとくるものがありません。なにせ佃煮屋、和風を基調にと心がけていますが、ありきたりのものでは飽き足りません。

お鍋売り場に移って、こんな可愛い器を見つけました。ル・クルーゼのものです。

ル・クルーゼといえば、性能もデザインも優れたフランスの有名なお鍋メーカーです。憧れながらも、今まで手を出せずにいました。

店員さんに用途を聞いたところ、さすがル・クルーゼ。ココットやプリン作りに、ディップ入れに…と、お洒落な料理の名前が並びます。まさか佃煮屋の店頭で、じゃこ山椒と塩昆布を入れて置かれるとは想定されていないでしょう。

漆塗りのスプーンとフォークを添えてガラスのサンプルケースの上に置くと、これが意外に合うんです。お客様にご試食を勧めるたびに、可愛いフォルムを眺めてはにんまりしています。

又兵衛桜

アートなこと

2012年04月13日

春爛漫、店の近く、裁判所まわりのしだれ桜が満開です。

今年は名所のお花見は行けそうにありませんが、こんな春もいいかなと…。

去年はどうしていたっけと考え、思い出しました。奈良県宇陀市の又兵衛桜を見に行ったんでした。

去年1月に、画家小泉淳作氏の展覧会が京都でありました。86歳で完成させたという奈良東大寺本坊の襖絵完成記念ということでした。満開の桜が描かれた襖絵があまりに素晴らしく、そのモデルとなったのが又兵衛桜と知り、どうしても見たくなったんです。

電車とバスに徒歩と、かなり辺鄙な場所でしたが、着いてみると、生憎つぼみは固いまま。それでも京都の観光地で愛でる桜と違い、孤高の姿に胸打たれるものがありました。枝の目立つ木に、襖絵の満開の花びらを重ね合わせて想像してみるのも一興でした。

氏は京都の知人から送ってもらう野菜を写生するのが常だったようですが、氏の描く野菜は驚くほど生命力に満ち溢れています。

86歳にして大仕事を終えたあとの氏の言葉。

「あとは今までと同じ、冬になれば蕪を見つめ、夏になれば茄子を見つめる生活に戻るだけである」

今年1月、88歳で亡くなられました。

あっぱれな人生に感服です。

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