彩(いろどり)
店のこと
2025年01月07日
あけましておめでとうございます。
年末年始、どのように過ごされましたでしょうか? 過ぎた一年を振り返り、新しい一年を展望する。そんなひと時を持たれた方も多かったかと思います。
年末にその年の世相を表す漢字が発表されるのも、すっかり恒例行事となりました。昨年はまたも「金」。良くも悪くも、私たちにとって切っても切れないものということかもしれません。
一昨年の2023年は私も年初に今年の漢字を決めました。出掛けた新年会で書き初めの企画があり、「我」と書いたところ、まさにその通りの一年に。(ブログ 我)
それに気をよくして、昨年もぜひやってみようと思ったのですが、自分で書き初めの準備をするのが面倒で。そうこうする間に、すっかり忘れ去り…。
昨年は開店から12年。一巡りしたということで「リ・ボーン大作戦」と銘打ち、いろいろなことを見直し、変えてみる。という小さなチャレンジを試みる年と決めました。
平袋のリニューアル(ブログ 平袋)、山椒まよねーずのリニューアル(ブログ山椒まよねーず)と来て。
次は店内のレイアウトの見直しをと思っていたところ、適任の設計士さんとの出会いに恵まれたのは幸運なことでした。
店の設えとお客様の動線が合っていないこと、店のイメージを表現し切れていないことなど、長年気になっていたことを相談したところ…。
今あるものを生かしつつ、配置を変えたり、足りないものをプラスしたり、といったことでも充分に変わりうる。とのアドバイスをいただき、早速、次の定休日から実践開始。
エコな模様替えながら効果は上々で、常連のお客様から、ご無沙汰のお客様、新規のお客様まで口々に褒めていただき、さすがプロ!と感心した次第です。
なにより店に立つ私自身がとても心地よく、初めて「センター」に立てた気分になれたのは不思議な感覚でした。
新しい設えの店内をしみじみと見渡しながら、思わず知らずこんな言葉が口をついて出ました。
彩りが生まれた…。
昔の白黒写真を今の技術でカラーにしてみせる、というのがありますが、まさにそんな感じです。
思えば12年前。もともとある店から独立という形での開業。既にあるものを踏襲する、というのが自然の流れでした。
その中でも自分たちらしいカラーも打ち出したい。そう願ってきましたが、バランスが難しく、いつも模索を続けていたような。
一体、私はこの店をどんな風にしたいんだろう…。
「リ・ボーン大作戦」と取り組むなかで、改めて自分と向き合う時間を持つことができました。
そうして自分らしい色を探り当て、彩りある店に生まれ変わることができたように思います。
まさに、リ・ボーン。
そういえば、年頭に一人書き初めをしようと考えていた時、私はなんて書こうと思っていたんだろう…。
そうだ!「彩(いろどり)」でした。
私らしい色を打ち出して、彩りある店にしていきたい。そう思っていました。
なんだか出来過ぎで、こじつけたようですが、本当です。
12月30日の夕方、遅い紅葉にまだまだ落葉する通りの銀杏を掃きながら、ふと振り返ると…。
彩り豊かな店の内外が灯りに浮かび上がり、見慣れているはずの店がとても新鮮に映りました。
あぁ、魂が宿った…。
置き場の定まらなかった魂が、ようやくあるべき場所を見つけた。そう思えた一年の最終営業日でした。
「リ・ボーン大作戦」には様々な方にご尽力いただき、感謝の思いでいっぱいです。
まだまだ道半ば、これからも小さなチャレンジを続け、店をいろんな色に彩っていきたいと思っています。
どうか本年もよろしくお願い申し上げます。
山椒まよねーず
店のこと
2024年12月05日
もうお買い上げくださった方もあるでしょうか。「山椒まよねーず」をリニューアルいたしました。
今から7年前、開店の5周年記念に山椒を使った調味料を作れないかと考えていたところ、ユーサイド様にご協力いただけることに。そうして誕生したのが「山椒まよねーず」です。
ユーサイド様といえば、マヨネーズをはじめ、上質な素材による液体調味料の開発、製造、販売で有名な会社さんです。知人の紹介でご縁をいただけたのは本当に幸運なことでした。(株式会社ユーサイド)
いわゆるPB(プライベートブランド)商品と呼ばれる「しののめ寺町」オリジナルの商品ですが…。
うちのような小さな店がPB商品を作るなど、本来なら夢のようなこと。それを叶えられたのは、ひとえに「ユーサイド」様のご尽力の賜物でした。
PB商品というものの意味もよくわからない私に、さまざまアドバイスをいただき、5周年記念として無事に販売にこぎつくことができたのは、今になってみると奇跡に思えます。
店頭で手に取られるお客様が一様に「山椒まよねーず? !」と驚かれるのを目の当たりにするにつけ、オリジナリティのある商品なんだなぁと実感したものです。
「どう使ったらいいの?」というお客様の声から、料理家UTUCIKIさんのご協力でレシピを提供するようにもなりました。(山椒まよねーずレシピ集)
完売が近づくと、また次の製造をお願いし。お蔭様で販売から7年、うちにとってなくてはならない大切な商品に育ってきたように感じています。
ところが、昨今のさまざまな社会情勢により、これまで通りのものを製造することが困難な状況になりました。瓶の形状を変えざるを得なくなったり。山椒不足も深刻で。
そんななか今回もまたユーサイド様に多大なご尽力をいただき。新しいラベルは、先だって平袋のデザインでもお世話になった深谷はるのちゃんにお願いし。(ブログ 平袋)
想定外の時間を要し、ようやく完成した「山椒まよねーず」と対面した時のうれしさといったら…。
市場では毎日たくさんの新商品が生まれ、消えていくといいます。
私たちが日々、目にし、手に取っている商品の向こうで、どれだけのご苦労があるんだろう。今回のリニューアルに当たり、改めて痛感したことです。
うちもこれを機に販売を中止する、という選択肢もあったのかもしれません。が、私の頭にはまったくそんな思いはよぎらず。なんとしても継続したい、その一心でした。
私の思いを汲み、ご尽力くださったユーサイド様。イメージ通りのお洒落なラベルをデザインしてくれた深谷はるのちゃん。打ち合わせを重ねラベルを制作いただいた株式会社 山一様。あれこれ迷う私の相談に気長に付き合ってくれた「しののめ寺町」のアルバイトさん…。
多くの方のお力の結集で誕生した新生「山椒まよねーず」。人気商品に育てていくことが、なによりの恩返しだと思っています。
素材の良さと確かな製法によるマヨネーズ自体の美味しさは間違いありません。そこに程よい山椒の香りが合わさって、ほかのどこにもない「山椒まよねーず」ならではの味わいが生まれています。
いつもの食卓を少し贅沢にしてくれる「山椒まよねーず」。今回のラベルにはレシピ集のQRコードをつけています。ぜひご覧になってお試しいただけたら、これに勝る喜びはありません。
下記の写真は以前のものです。こちらもとても愛着のあるものでした。7年間、お疲れ様でした。心からありがとう!
平袋
店のこと
2024年08月10日
もう手に取ってくださった方もおられるでしょうか? このたび平袋をリニューアルいたしました。
従来の平袋は、開店の際に、もともとあった包装紙の絵柄をアレンジして作ったものです。
ちょうど着物の小紋のようなイメージで「京都らしくていいね」と仰っていただくことも多く。私もとても気に入って使ってきました。
そんな慣れ親しんだ平袋をリニューアルするというのはかなり勇気のいることでしたが、実は私の中に温めていた夢がありました。
数年前まで、店の近くに銅駝美術工芸高校という美術系の高校があり、2年生が課題としてパッケージを作りに来てくれるのが恒例となっていました。
それぞれに瑞々しい感性で取り組み、その完成までの工程を眺めるのはとても楽しいものでした。
ある年、珍しいことに試作品をくれた女の子がいました。素晴らしい出来栄えに思わず褒めちぎったのですが、当の本人はひょうひょうとしていたのを覚えています。
私はそれを大切に引き出しにしまい、時々取り出しては惚れ惚れと眺め。いつかうちの平袋にできないかと夢見るように。
今年は開店から12周年。いわゆる一巡という節目に、思い切ってこの夢を実現させよう! そう思い立った次第です。
早速かつての資料を引っ張り出すも、高校は移転してしまい。校名も変わり。私自身の記憶もおぼろげで。
果たして彼女にたどり着けるものやら。たどり着けたとして、そんな申し出を受け入れてもらえるものやら。
雲をつかむような話ですが、この素敵なデザインで、ほかのどこにもないパッケージを作りたい! その一念でした。
あれこれ手を尽くすなか、ダメもとで送ったメールが思いがけず本人に届き。返信をもらった時は飛び上がる思いでした。
その女の子というのは深谷はるのちゃん。幸いなことに今も京都在住で、早速、店に来てくれました。
6年ぶりの再会、当時の面影を残しつつも、すっかり大人になっていたのは当然のことでしょうか。
今では本物のデザイナーになっていて、彼女がパッケージをデザインした商品が有名なショップに並んでいるとのこと。
高校生の時の夢をしっかり実現させていることに驚くと共に、先見の明のあった自分に感心したりなんかして(笑)。
というわけで、行方知らずだったデータを探し出すや、印刷までの作業をスラスラとこなしてくれました。
そうして完成したのが写真の3種類の平袋です。繊細なタッチ、うまく伝わっているでしょうか?
和風の落ち着きと、ヨーロッパ調の軽やかでお洒落な雰囲気が絶妙のバランス…。
高校生とはとても思えない大人びたデザインは、1枚ずつでも素敵ですが、並べるとさらに素敵です。
お蔭様でお客様にも好評のようで、なにより私自身が平袋を見てはとても幸せな気持ちになっています。
店は人なり。よく言われることです。
ならば、店を自分が素敵と思うもので満たしてみる。
それこそが魅力ある店作りというものなんじゃないか。
新しい平袋を眺めながら、そんなことを思うこのごろです。。
完成までにご尽力くださった皆様、私の夢を叶えてくれた深谷はるのちゃん、本当にありがとうございました!
この平袋が一人でも多くのお客様の手元に届きますように。どうぞよろしくお願いします。
橋本さんのこと
店のこと
2023年12月21日
悲しい知らせが届きました。開店以来、ちりめんじゃこを納めていただいている中央市場の橋本さんの訃報です。
ちりめんじゃこは、うちにとって根幹となるもの。橋本さんがいてくださらなくては始まらず。ずっといてくださるものと信じて疑わなかった私。
まだまだ働き盛りの60代。あまりに突然のことでした。
一口にちりめんじゃこといっても様々です。大きさ、固さ、色合い、乾燥の具合、味…。
長年ちりめんじゃこに携わってこられた橋本さん。うちのおじゃこの好みも熟知してくださっていて、その目利きと采配に全幅の信頼を寄せてきたところです。
そうはいっても自然の恵み。気候や台風の影響などで、それはそれは厳しい状況に陥る時も。実のところ、ちりめんじゃこの不漁は今に至るまで長年続いています。
当然ながら価格は高騰。時にとても手の出ない高値になることも。
そんななかでも、絶えることなく、品質を落とすことなく、ちりめんじゃこを仕入れてこられたのは、ひとえに橋本さんの並々ならぬご尽力のお蔭です。
一方で長きにわたったコロナ禍。ほんのわずかしか注文できない状況が何年続いたことでしょう。
どんな時も、蔭となり、日なたとなって、いつも笑顔で支えてくださった橋本さん。ご心労はいかばかりかと心で詫びながらも、頼れるのは橋本さんしかなく。
繁盛店にすることがなによりの恩返し。橋本さん、もう少し待っててね。あと少し、あと少し…。と思いつつ、なかなか叶わないまま迎えた昨年の10周年。
思いがけなくも、立派なお花を贈ってくださり、胸がいっぱいになりました。写真がその時のものです。
本当に早く恩返しをしなきゃ、と気持ちも新たに迎えた今年だったのに…。
病床にありながらも最後まで仕事のことを気に掛けられていたとのこと。心底、ちりめんじゃこを愛しておられた方だったんだなぁと思います。
そして、中央市場がもっとも忙しくなる12月目前での突然の幕切れ。どんなに無念な思いで旅立たれたことでしょう。
橋本さんのご尽力は十分にわかっていたつもりでした。が、今回、改めて、蔭でどれだけご苦労いただいていたかを知ることとなりました。
その真摯なお仕事ぶりに、私自身、ふだん忘れがちだったことにたくさん気付かされています。
自然の恵みを生業とさせていただいていることの有り難さ。
健康で働けることの喜び。
安易に手にしている商品やサービスの向こうに、さまざまご苦労くださっている方があることへの感謝。
……
当たり前のことなんて一つもないんだなぁ。
泣いている場合じゃない!
「ここのおじゃこは美味しいね」
たくさんのお客様にそう仰ってもらえるよう。私、がんばるよ、橋本さん。
ありがたいことに新しく担当していただいている方が、またご尽力くださっています。だから大丈夫! 安心してください。
このブログ、ご家族や関係者の方の了解を得ずに書いています。
京都中央市場に、こんな仕事人がおられたこと。そのお蔭で「しののめ寺町」を今日まで続けてこられたこと。書かずにはいられませんでした。どうぞお許しください。
橋本さん、本当にありがとうございました!
11周年
店のこと
2023年03月30日
お蔭様を持ちまして、3月16日、「しののめ寺町」は11周年を迎えることができました。ひとえにご愛顧いただいているお客様、お世話になっている取引業者様のお力添えの賜物。ありがとうございます!
なんといいましても昨年の10周年は大きな節目でした(ブログ 10周年)。思い返してみると、開店以来ことあるごとに、「10年はがんばりたい」「10年まであと〇年」。そんな言葉がよく口をついて出たものです。
なんで10年?と聞かれてもよくわからないけれど。10年を待たずに店を畳むことになれば、「あぁ失敗しはったなぁ」って言われるんだろうなぁ。漠然とそんなイメージがありました。
そりゃあ、数年で店を畳んでは失敗と言われても仕方ありません。でも、何年で終わったとしても、3年なら3年、5年なら5年、その年数分がんばってきたものがあるはず。それを「失敗」の一言で済まされては悲しい。
10年続けば成功というものでもないけれど。10年あたりを目安に、「まぁがんばらはったなぁ」とひとまずは認めてもらえるような。許してもらえるような。
それって、誰に? と聞かれても、これまたよくわからないけれど。神様なのか、いわゆる「世間」というものなのか、はたまた自分自身なのか。
ともあれ10年というものを目標にし、励みにし、そうしてやっとこさ辿り着いた昨年の10周年。
「10年」という目標を達成した喜びと共に、「10年」という呪縛から解放された安堵感も大きく。この「10年」が緊張に満ちた年月だったことを、改めて思い知った次第です。
遡ること11年前、予想外の突然の独立劇。一からの起業とは違う恩恵もあれば、難しさもあり。自分の店であって、自分の店でないような…。なにかしら不自由さが付きまとうのも致し方ないことでした。
10年を経て、もうそろそろそうしたものから解き放たれてもいい頃かな。店も、自分も…。
なにものにも囚われることなく、もっと自由に独自の店作りをしていきたい。そんな思いが芽生えた一年でした。
そうして迎えた今年の3月16日。朝一番に大きな箱が届きました。開けると、今にもほころび始めんばかりの蕾をたわわにつけた桜の束が。
送り主は当時大学生だった初代アルバイトの女の子。卒業と同時に地元に戻り就職、今では素敵な大人の女性になっています。
この日を忘れず、毎年それはそれは趣向を凝らしたお花を贈ってくれる彼女。今年は11年ということで、漢数字の「一」からイメージして枝物にしようと決めたのだとか。
実のところ、私はろくでもない人間なんじゃないかと思うことがあります。いやはや本当です。それが、こんなことをしてもらえるなんて…。
私も捨てたもんじゃない!
そう思わせてくれるに余りある素晴らしい贈り物に、胸がいっぱいになりました。
日々、困難は尽きません。が、これからはもう少し自信を持って、自分らしい店作りをしていきたい。
その後、見事に開花した桜を眺めながら、そんなことを思った11年目の春。これからも末永くよろしくお願い申し上げます。