一日レストランUTUCIKI
店のこと
2025年05月12日

ご紹介が遅くなりましたが、「一日レストランUTUCIKI」のことを書いてみたいと思います。
UTUCIKIさんは既にお馴染み、「しののめ寺町」のおじゃこや山椒まよねーずを使ったレシピを考案いただいている料理家さんです。(ブログ フードコーディネーター紗矢香さん)
2021年春からこちらのホームページでコーナーを設け、インスタグラム(shinonome_teramati)やfacebook((1) Facebook)でも随時紹介しているところです。
私にはカフェをやっている従姉妹がいるのですが、彼女からUTUCIKIさんのレシピの一つ「じゃこ山椒と梅しその冷製パスタ」をメニューに取り入れたいとの申し出があったのが、その夏のことでした。
そこからご縁が繋がって、「UTUCIKI」の紗矢香さん、「けやきカフェ」のよしえちゃん、そして「しののめ寺町」の私、気の合う仲良し三人組が誕生。
そうして2023年よりけやきカフェでのUTUCIKIさんによる一日レストランがスタートした次第です。
ご縁のきっかけとなった私としては、こんなうれしいことはなく。客として参加し、料理上手な二人のコラボレーションをいつも楽しませてもらってきました。
それが去年の秋のこと。せっかくの仲良し三人組、「しののめ寺町」もコラボに加わらないかとのお声掛けをいただき…。
これまでにUTUCIKIさんより提供いただいたレシピから一品をプチアミューズとしてメニューにプラス。お土産として、じゃこ山椒30gとおじゃこの割引券、その日のレシピをお持ち帰りいただく。
という形で今年から参加させてもらうようになりました。
と言いましても、私は相変わらずただの客として、食べて、飲んで、喋って、笑って…。調理にサーブに忙しい二人を尻目に申し訳ない限りです(笑)。
それにしても、毎回、不思議に思うことがあります。
テーブルごとに会話が弾むのはもちろんのこと、初対面のお隣さん同士がいつの間にか旧知の仲のよう、なんてことしばしばで。
時ににわかミニライブが始まったり、サプライズで誰かの誕生日を祝ったり、なんてことも。
いつも店中にえもいわれぬ温かな空気が漂っていて。誰もが笑顔で、心もお腹も満たされておられることが伝わってきます。
きっと、けやきカフェという場の持つ力と、UTUCIKIさんの心尽くしの手料理、そこに引き寄せられた人たちのキャラクターによって織り成されるものなのでしょう。
なかでも先月は、よしえちゃんと私が従姉妹のうえに、お客様の親戚率がとても高く。もう実家のない私ですが、酔いも手伝って、ここが実家かと錯覚するくらい(笑)。
最後は他のお客様も巻き込んで、まるで親戚の集まりのような賑やかな会となりました。
いろんなご縁が合わさって、こんな素敵なことが生まれる…。
人生っておもしろいものだなぁ。
これからまたどんな出会いが生まれ、どんなサプライズがまき起こるか、楽しみでならない「一日レストランUTUCIKI」。ご興味を持たれた方はぜひ一度ご参加ください。
ある月のメニューを掲載いたします。雰囲気だけでも味わっていただけましたら幸いです。
13周年
店のこと
2025年04月17日

もう一ヶ月が経ちましたが、お蔭様をもちまして3月16日、「しののめ寺町」は13周年を迎えることができました。ひとえに皆様のご愛顧の賜物。ありがとうございます!
13年前の開店前夜、疲労のピークもとうに越え、押しつぶされそうな不安と緊張も既に麻痺し、もはや開き直りとも思える精神状態だったような。
なにを思ったか、連日飲み続けたドリンク剤の空瓶を並べると、その様が妙に美しくて。当時はまだスマホを持っておらず、デジカメで写真を撮ったりなんかして(笑)。
その夜も疲れからすぐに眠りに就き、翌朝はとにもかくにも開店にこぎつけられたという安堵感いっぱいで目覚めました。
そうして、いよいよ開店。表の戸を開けるや、一番乘りされたお客様に掛けた「いらっしゃいませ!」の自分の声…。今でも鮮明に覚えています。
普段よりトーンが高く、なかなか元気がいい。私、こんな声で「いらっしゃいませ」って言うんやぁ。
どこか他人事のように自分のことを観察しながら、店が店として始まったことを体感した瞬間でした。
あれから13年、何度「いらっしゃいませ」を言ってきたことでしょう。
店というのは不思議なもので、店の人間がいくらがんばっても「気」は満ちないように思います。お客様が入って来られて初めて「気」が満ちる。そのスイッチは「いらっしゃいませ」の声。
「いらっしゃいませ」の響かない店ほど寂しいものはありません。「いらっしゃいませ」の絶えない、「気」の満ちた店になりたい! その一心でやってきました。
けれど、なかなか難しい…。
それでも試行錯誤しながら、少しずつではありますが自分たちらしい店になってきたでしょうか。
なかでも周年記念になにか企画を考えるのは楽しいことでした。1周年に当時ご近所だったシェラメールさんに「山椒メレンゲ」を作っていただいたのが始まりです。
5周年記念にはユーサイドさんに「山椒まよねーず」を。8周年にはミメリエンダさんに「山椒ポルボロン」を…。いろいろな方にお世話になってきました。
13周年の今年はささやかに、でも実質的なことを、と考え…。じゃこ山椒の割引券をご来店のお客様にお配りすることにしました。作成はじゃこ山椒と山椒まよねーずのレシピでお世話になっているUTUCIKIさんです。
有効期限をいつにしようか迷ったのですが…。
2026年3月16日に!
一年後にこの券を持ってご来店くださったお客様に、「お店なくなってる~」なんてことがあっては申し訳が立ちません。また一年がんばるぞぉ、と自分へのエールを込めて決めた期限です。
配布は終了しましたが、券をお持ちくださるお客様もぽつりぽつりとあり。ご活用いただいていることをうれしく思っているところです。
予測もつかない急速な変化の続く今の時代。ぼんやりしている私は常に何歩か遅れがち。お客様のご要望に充分応えられているとはいえず、申し訳なく思うことたびたびです。
それでも、大好きなこの店。私なりにこれからも進んでいきたいと思っています。
来年の3月16日、割引券を持ってご来店くださったお客様に、元気な声で「いらっしゃいませ」とお迎えしている自分の姿を思い描きながら…。
また一年、よろしくお願い申し上げます。
彩(いろどり)
店のこと
2025年01月07日

あけましておめでとうございます。
年末年始、どのように過ごされましたでしょうか? 過ぎた一年を振り返り、新しい一年を展望する。そんなひと時を持たれた方も多かったかと思います。
年末にその年の世相を表す漢字が発表されるのも、すっかり恒例行事となりました。昨年はまたも「金」。良くも悪くも、私たちにとって切っても切れないものということかもしれません。
一昨年の2023年は私も年初に今年の漢字を決めました。出掛けた新年会で書き初めの企画があり、「我」と書いたところ、まさにその通りの一年に。(ブログ 我)
それに気をよくして、昨年もぜひやってみようと思ったのですが、自分で書き初めの準備をするのが面倒で。そうこうする間に、すっかり忘れ去り…。
昨年は開店から12年。一巡りしたということで「リ・ボーン大作戦」と銘打ち、いろいろなことを見直し、変えてみる。という小さなチャレンジを試みる年と決めました。
平袋のリニューアル(ブログ 平袋)、山椒まよねーずのリニューアル(ブログ山椒まよねーず)と来て。
次は店内のレイアウトの見直しをと思っていたところ、適任の設計士さんとの出会いに恵まれたのは幸運なことでした。
店の設えとお客様の動線が合っていないこと、店のイメージを表現し切れていないことなど、長年気になっていたことを相談したところ…。
今あるものを生かしつつ、配置を変えたり、足りないものをプラスしたり、といったことでも充分に変わりうる。とのアドバイスをいただき、早速、次の定休日から実践開始。
エコな模様替えながら効果は上々で、常連のお客様から、ご無沙汰のお客様、新規のお客様まで口々に褒めていただき、さすがプロ!と感心した次第です。
なにより店に立つ私自身がとても心地よく、初めて「センター」に立てた気分になれたのは不思議な感覚でした。
新しい設えの店内をしみじみと見渡しながら、思わず知らずこんな言葉が口をついて出ました。
彩りが生まれた…。
昔の白黒写真を今の技術でカラーにしてみせる、というのがありますが、まさにそんな感じです。
思えば12年前。もともとある店から独立という形での開業。既にあるものを踏襲する、というのが自然の流れでした。
その中でも自分たちらしいカラーも打ち出したい。そう願ってきましたが、バランスが難しく、いつも模索を続けていたような。
一体、私はこの店をどんな風にしたいんだろう…。
「リ・ボーン大作戦」と取り組むなかで、改めて自分と向き合う時間を持つことができました。
そうして自分らしい色を探り当て、彩りある店に生まれ変わることができたように思います。
まさに、リ・ボーン。
そういえば、年頭に一人書き初めをしようと考えていた時、私はなんて書こうと思っていたんだろう…。
そうだ!「彩(いろどり)」でした。
私らしい色を打ち出して、彩りある店にしていきたい。そう思っていました。
なんだか出来過ぎで、こじつけたようですが、本当です。
12月30日の夕方、遅い紅葉にまだまだ落葉する通りの銀杏を掃きながら、ふと振り返ると…。
彩り豊かな店の内外が灯りに浮かび上がり、見慣れているはずの店がとても新鮮に映りました。
あぁ、魂が宿った…。
置き場の定まらなかった魂が、ようやくあるべき場所を見つけた。そう思えた一年の最終営業日でした。
「リ・ボーン大作戦」には様々な方にご尽力いただき、感謝の思いでいっぱいです。
まだまだ道半ば、これからも小さなチャレンジを続け、店をいろんな色に彩っていきたいと思っています。
どうか本年もよろしくお願い申し上げます。
山椒まよねーず
店のこと
2024年12月05日

もうお買い上げくださった方もあるでしょうか。「山椒まよねーず」をリニューアルいたしました。
今から7年前、開店の5周年記念に山椒を使った調味料を作れないかと考えていたところ、ユーサイド様にご協力いただけることに。そうして誕生したのが「山椒まよねーず」です。
ユーサイド様といえば、マヨネーズをはじめ、上質な素材による液体調味料の開発、製造、販売で有名な会社さんです。知人の紹介でご縁をいただけたのは本当に幸運なことでした。(株式会社ユーサイド)
いわゆるPB(プライベートブランド)商品と呼ばれる「しののめ寺町」オリジナルの商品ですが…。
うちのような小さな店がPB商品を作るなど、本来なら夢のようなこと。それを叶えられたのは、ひとえに「ユーサイド」様のご尽力の賜物でした。
PB商品というものの意味もよくわからない私に、さまざまアドバイスをいただき、5周年記念として無事に販売にこぎつくことができたのは、今になってみると奇跡に思えます。
店頭で手に取られるお客様が一様に「山椒まよねーず? !」と驚かれるのを目の当たりにするにつけ、オリジナリティのある商品なんだなぁと実感したものです。
「どう使ったらいいの?」というお客様の声から、料理家UTUCIKIさんのご協力でレシピを提供するようにもなりました。(山椒まよねーずレシピ集)
完売が近づくと、また次の製造をお願いし。お蔭様で販売から7年、うちにとってなくてはならない大切な商品に育ってきたように感じています。
ところが、昨今のさまざまな社会情勢により、これまで通りのものを製造することが困難な状況になりました。瓶の形状を変えざるを得なくなったり。山椒不足も深刻で。
そんななか今回もまたユーサイド様に多大なご尽力をいただき。新しいラベルは、先だって平袋のデザインでもお世話になった深谷はるのちゃんにお願いし。(ブログ 平袋)
想定外の時間を要し、ようやく完成した「山椒まよねーず」と対面した時のうれしさといったら…。
市場では毎日たくさんの新商品が生まれ、消えていくといいます。
私たちが日々、目にし、手に取っている商品の向こうで、どれだけのご苦労があるんだろう。今回のリニューアルに当たり、改めて痛感したことです。
うちもこれを機に販売を中止する、という選択肢もあったのかもしれません。が、私の頭にはまったくそんな思いはよぎらず。なんとしても継続したい、その一心でした。
私の思いを汲み、ご尽力くださったユーサイド様。イメージ通りのお洒落なラベルをデザインしてくれた深谷はるのちゃん。打ち合わせを重ねラベルを制作いただいた株式会社 山一様。あれこれ迷う私の相談に気長に付き合ってくれた「しののめ寺町」のアルバイトさん…。
多くの方のお力の結集で誕生した新生「山椒まよねーず」。人気商品に育てていくことが、なによりの恩返しだと思っています。
素材の良さと確かな製法によるマヨネーズ自体の美味しさは間違いありません。そこに程よい山椒の香りが合わさって、ほかのどこにもない「山椒まよねーず」ならではの味わいが生まれています。
いつもの食卓を少し贅沢にしてくれる「山椒まよねーず」。今回のラベルにはレシピ集のQRコードをつけています。ぜひご覧になってお試しいただけたら、これに勝る喜びはありません。
下記の写真は以前のものです。こちらもとても愛着のあるものでした。7年間、お疲れ様でした。心からありがとう!
平袋
店のこと
2024年08月10日

もう手に取ってくださった方もおられるでしょうか? このたび平袋をリニューアルいたしました。
従来の平袋は、開店の際に、もともとあった包装紙の絵柄をアレンジして作ったものです。
ちょうど着物の小紋のようなイメージで「京都らしくていいね」と仰っていただくことも多く。私もとても気に入って使ってきました。
そんな慣れ親しんだ平袋をリニューアルするというのはかなり勇気のいることでしたが、実は私の中に温めていた夢がありました。
数年前まで、店の近くに銅駝美術工芸高校という美術系の高校があり、2年生が課題としてパッケージを作りに来てくれるのが恒例となっていました。
それぞれに瑞々しい感性で取り組み、その完成までの工程を眺めるのはとても楽しいものでした。
ある年、珍しいことに試作品をくれた女の子がいました。素晴らしい出来栄えに思わず褒めちぎったのですが、当の本人はひょうひょうとしていたのを覚えています。
私はそれを大切に引き出しにしまい、時々取り出しては惚れ惚れと眺め。いつかうちの平袋にできないかと夢見るように。
今年は開店から12周年。いわゆる一巡という節目に、思い切ってこの夢を実現させよう! そう思い立った次第です。
早速かつての資料を引っ張り出すも、高校は移転してしまい。校名も変わり。私自身の記憶もおぼろげで。
果たして彼女にたどり着けるものやら。たどり着けたとして、そんな申し出を受け入れてもらえるものやら。
雲をつかむような話ですが、この素敵なデザインで、ほかのどこにもないパッケージを作りたい! その一念でした。
あれこれ手を尽くすなか、ダメもとで送ったメールが思いがけず本人に届き。返信をもらった時は飛び上がる思いでした。
その女の子というのは深谷はるのちゃん。幸いなことに今も京都在住で、早速、店に来てくれました。
6年ぶりの再会、当時の面影を残しつつも、すっかり大人になっていたのは当然のことでしょうか。
今では本物のデザイナーになっていて、彼女がパッケージをデザインした商品が有名なショップに並んでいるとのこと。
高校生の時の夢をしっかり実現させていることに驚くと共に、先見の明のあった自分に感心したりなんかして(笑)。
というわけで、行方知らずだったデータを探し出すや、印刷までの作業をスラスラとこなしてくれました。
そうして完成したのが写真の3種類の平袋です。繊細なタッチ、うまく伝わっているでしょうか?
和風の落ち着きと、ヨーロッパ調の軽やかでお洒落な雰囲気が絶妙のバランス…。
高校生とはとても思えない大人びたデザインは、1枚ずつでも素敵ですが、並べるとさらに素敵です。
お蔭様でお客様にも好評のようで、なにより私自身が平袋を見てはとても幸せな気持ちになっています。
店は人なり。よく言われることです。
ならば、店を自分が素敵と思うもので満たしてみる。
それこそが魅力ある店作りというものなんじゃないか。
新しい平袋を眺めながら、そんなことを思うこのごろです。。
完成までにご尽力くださった皆様、私の夢を叶えてくれた深谷はるのちゃん、本当にありがとうございました!
この平袋が一人でも多くのお客様の手元に届きますように。どうぞよろしくお願いします。