9周年

店のこと

2021年03月25日

9周年

去る3月16日、「しののめ寺町」は9周年を迎えることができました。ひとえに皆様のご愛顧の賜物、ありがとうございます。

常々、不思議に思っているのですが…。このところご無沙汰のお客様、どうされているかなぁ、なんて思っていると、その数日後にひょっこりご来店。ビックリすることがあります。

沈んだ気持ちでいる時に限って、楽しいお客様が続き、たちまち気持ちも晴れ晴れ、なんてことも。

あまりにタイムリーなご来店に、私の思いが通じて馳せ参じてくださったのか。はたまた神様のお計らいか。なんて思わずにはいられないこと、しばしばです。

どんな時も皆様の笑顔とあたたかいお言葉が支えとなり、今日までやってくることができたのだなぁと、心から思っています。

一年前の8周年は、ちょうどコロナ禍が深刻になり始めた頃でした。そんななか縁あって、Mi meriendaさんとのコラボ商品【山椒きなこポルボロン】が誕生しました。

周年記念にと特別のパッケージをご用意くださり、お客様にプレゼントできたことは、不穏な日々のなか、心温まる企画となりました(ブログ山椒きなこポルボロン)。

その後、コロナの猛威は勢いを増すばかり。こそりとも音のしない店内で、すっかり停止してしまったような時間のなか、いろんなことを考え、ない知恵を絞り、とにかく出来ることからしなければと動き出し…。

気付けば、店内外のしつらえが変わり、包装資材が改良され。助成金の煩雑な申請作業では鍛えられることもあり。コロナに泣かされ、コロナに背中を押された一年だったように思います。

9周年…。中途半端な数字ですが、思いひとしおの今年です。

思い起こせば、初めての周年に誕生したのが、ご近所の洋菓子店シェラメールさんに作っていただいた【山椒メレンゲ】でした。のちに続くコラボ商品、周年記念の先駆けとなった始まりです(ブログ メレンゲ妃)。

そのシェラメールさんも昨年、店舗を移転され、【山椒メレンゲ】も惜しまれながら終了したのですが、今回、特別に作っていただくことができました。お客様にプレゼントしながら、初心に帰った思いのする懐かしい企画となりました。

ことほどさように、まわりのあらゆる方々に恵まれながら積み重ねてきた一年一年。改めて感謝の思いでいっぱいです。

9周年とくれば、次は10周年を目指さないわけにはいきません!(笑)

この間に考えたこと、湧き出てきた思い。そんなことを一つ一つ形にしながら進んでいきたいと思います。

このブログでもお伝えしていくつもりです。店共々、これからもどうぞよろしく願い申し上げます。

人生って、ただごとじゃないのよねぇ

素敵な女性

2021年02月25日

人生って、ただごとじゃないのよねぇ

このブログでも何度か書いていますが、行き詰まると出かけたくなるブックカフェがあります。そこに行くと答えが見つかるという不思議な場所です(ブログ画家 堀文子さんのこと(ブログ自分の中に毒を持て

去年の7月はじめ、その時もなにか行き詰っていたのでしょう、仕事帰りにふらりと出かけました。

座った席の前に並んでいたのが、翻訳家 須賀敦子さんのエッセイ数冊でした。やはり、このブログでも何度か書いている敬愛する女性の一人です(ブログユルスナールの靴 ユルスナールの靴2)。

「そうきましたかぁ!」と思わず心の中で叫んでしまいました(笑)。

見覚えのあるタイトルの中で、初めて目にするのが「遠い朝の本たち」でした。読書家であった須賀敦子さんが愛しんだ文学作品の数々を、それにまつわるエピソードと共に紹介されたもので、その最初の章が「しげちゃんの昇天」でした。

戦中戦後、多感な年ごろを共に過ごした幼馴染みのしげちゃん。よく文学談義をし、小説家になってもいいほどの文才がありながら、学校卒業と同時に戒律厳しい修道院に入ってしまいます。

「世の中で、だれか祈ることにかまける人間がいてもいいんじゃないかと思って」。そう言って…。

会うこともままならないまま互いに人生を重ね、ようやく会えたのは35年後。病床にあるしげちゃんを見舞った時でした。それも修道院の広い格子窓を隔てて。

大学のころの思い出話に花が咲くなか、こんなやりとりが交わされます。

 

ほんとうにあのころはなにひとつわかってなかった、と私があきれると、しげちゃんはふっと涙ぐんで、言った。ほんとうよねぇ。人生って、ただごとじゃないのよねぇ、それなのに、私たちは、あんなに大いばりで、生きてた。

 

厳格な暮らしの中で、数知れぬ苦労があったはずなのに、そんなことは語らなかったというしげちゃん。この短い言葉の向こうに、どんな人生があったのでしょう。俗社会に生きる私には想像もつきません。

ただ、真に大人の女性が持つ寛容さと強さ。そうしたものがこの言葉には秘められている気がして、何度読み返しても心に迫ります。なんというか、哀しいのだけれど、美しい…。

それを汲み取り、静かに聞き入る須賀敦子さん。離れていても育み続けられた友情が、ひたひたと伝わってきます。そして最後、こう結ばれています。

 

しげちゃんが、ただごとでない人生を終えて昇天したのは、それからひと月もしないうちだった。

 

これが、行き詰っていたであろうその時の私の答えになったのかどうか、記憶は定かではありません。ただ、なにか腑に落ちるものを感じてカフェをあとにしたことを覚えています。

印象深く心に残ったこの言葉ですが、どうしたことか、このところしきりに思い出されます。年齢を重ね、経験を積むごとに実感する思いなのでしょうか。コロナ禍の混沌も影響しているかもしれません。

しげちゃんの、ただごとじゃない人生を支えたものはなんだったんだろうと考えます。私などが語るのは僭越ですが、それはやはり覚悟と信念だったのではないでしょうか。

自分が信じること、自分が決めたこと、そのことへの揺るぎない覚悟と信念。それが確かな指標となって、ただごとじゃない人生を全うされたんじゃないか。

この本は、病床にある須賀敦子さんが、最後まで推敲を加えて完成されたとのこと。須賀敦子さんもまた、ただごとじゃない人生を全うされたのだなぁと思います。ご自身の覚悟と信念を持って。

とうてい及びませんが、私もお二人のように、ただごとじゃない人生を全うしたい。私は私の覚悟と信念を持って。

そんなことを思うこのごろ。店共々、これからもよろしくお願い申し上げます。

竹中大工道具館

お友達のこと

2021年01月18日

竹中大工道具館

新年の御挨拶がすっかり遅くなりました。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、新しい年が始動しましたが、コロナ禍は収まるどころか、さらに深刻な様相。関東に続き、関西にも緊急事態宣言が出され、まだまだ先は見えそうにありません。

明けない夜はない…。最近よく耳にする言葉です。確かにそうだと思いつつも、未曽有の事態がこうも長引くと、気休めにしか思えないことも。それでもなにかしら希望をつなぎながら、日々を過ごしていきたい。そう願うばかりのこのごろです。

さて、冒頭の写真は私です。新年最初のブログにお恥ずかしい限りですが、敢えて、敢えて、載せました(汗)。といいますのも…。

このブログでも何度か書いている神戸の友人、写真家の一恵ちゃん(ブログ感性 ブログ一恵ちゃん2)。コロナ禍でなかなか会えずにいましたが、第2波が落ち着いてきた昨年11月にやっと会うことができました。

行先をどうしようという話になった時、彼女が一番に挙げたのが神戸にある「竹中大工道具館」でした。竹中工務店さんが建てられたという、日本で唯一の大工道具を展示した博物館とのことです。

「変わってる~」と思いつつ(笑)、彼女の誕生月ということで、私はお付き合いのつもりで出かけて行きました。

思えば、昨年2月にやはり彼女と出かけたゴッホ展以来(ブログゴッホ展)、店と自宅の往復のみの毎日。本当に久しぶりの外出です。

電車に揺られ車窓を眺めながら、この間、いろんなことがあったなぁ。なんて考えていると、急に涙がぽろぽろ流れてきました。どうしたことかと自分にビックリ! 慌ててマスクを外して涙をふくも、マスクをつけた途端にまた涙。また外して、またつけて…。

無我夢中過ぎて自覚していなかったけれど、張り詰めた思いで暮らしていたんだなぁと、しみじみ。

電車が着く頃には涙も止まり、久しぶりの再会にあとは笑顔、笑顔。「竹中大工道具館」では、素晴らしい職人技を目の当たりにして、二人して盛り上がる盛り上がる。やっぱり感性の似ている私たちでした(笑)。

鑑賞後、館内の庭でひと休み。11月とは思えない暖かな日で、置かれた椅子に座っていると、まるで縁側の日向ぼっこのよう。茶室を背景にした木を見上げると、その先にそれはそれは綺麗な青空…。

本当に気持ちよくて、これまでの緊張が一気に解けていくようでした。がんばっていれば、こんな日が来るんだ…。ご褒美をもらったようなうれしさも。そんな私の姿を一恵ちゃんが写真に収めてくれたのでした。

自分の作品では人物は撮らない彼女ですが、贅沢にも友達特典で、一緒に出掛けた時にはよく撮ってもらいます。知らない間に撮ってくれていることもあるのですが、これが、私 ? ! って驚くことがよくあります。

なんていうか、私の知らない私のような。私の内面にいる、もう一人の私のような。

この写真もそうでした。私はなにを見上げているんだろう。うれしそうに笑みを浮かべたりなんかして…。

自分のことなのに、木と空を見上げていることを知っているはずなのに、あれこれ想像をしてしまいます。

この視線の先には、こうありたいと願う未来が実現した、その様を見ているんじゃないか。だからこんなにもうれしそう…。何度見ても、そんな気がしてなりません。

対象の本質を見抜き、一瞬を逃さない写真家ならではの目線と共に、私のことをよくよく知ってくれている彼女だからこそ撮れた写真だったのだと思います。

ありがとう。

必ずや今回のコロナ第3波も収まり、はたまた私の人生の大波小波も収まり、この視線の先にあるような明るい未来がきっと来る! 根拠なくそんな希望が湧いてくる不思議な写真。お気に入りの一枚です。

期待せずに出かけた「竹中大工博物館」。予想外に思い出深い場所となりました。実直な仕事をしてこられた職人さんたちの魂の宿る場所。そんな場所の持つパワーがもたらしてくれた豊かな時間だったのかもしれません。

このあと昼食に出かけた近くのホテルのレストラン街は、閉められている店も多く、たちまち胸ふさぐ思いでした。現実は想像を超えて過酷です。

それでも前に進んでいこう。

一年最初のブログ。かなり無理くりですが、希望を謳ってみました。その心意気に免じて、お恥ずかしい写真もご容赦を。皆様、くれぐれもご用心のうえお過ごしください。

ファイト!

店のこと

2020年12月24日

ファイト!

このところバタバタしていて余裕がなく、ブログの更新がすっかり遅れてしまいました。そうこうしている間に、新型コロナウィルスの第三波で、また大変な世の中に。皆様、どのようにお過ごしでしょうか?

そんな今、耳について離れない曲があります。「ファイト!」。以前から私のブログを読んでくださっている方にはお馴染み、またも中島みゆきさんの曲です。(ブログ誕生 ブログ時代

ファイト! 闘う君の唄を

闘わない奴らが笑うだろ

ファイト!

冷たい水の中を

ふるえながらのぼっていけ

この一節が有名で、皆さんも一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。

この夏に観た、中島みゆきさんの名曲がタイトルになった映画「糸」のなかでも歌われていていました(ブログ)。以来、なんとなく心に残っていたところへ、先日、たまたまつけたテレビの歌番組で女優の満島ひかりさんが歌っておられるのを聴きました。

満島ひかりさん、不思議な魅力があり、好きな女優さんの一人です。ある時、著名な精神科医と対談されているのを見たことがあります。

その道の専門家相手に物怖じすることなく、ご自身のスピリチュアルな体験などを、とても楽し気に話されていて、魅力の源を垣間見た気がしたのを覚えています。

そんな彼女の歌う「ファイト!」。中島みゆきさんの歌唱ももちろん素晴らしいけれど、また違った世界観で、衝撃を受けてしまいました。

今回、改めて聴き入るなか、有名な前述の一節とは別に、とても心に迫る一節がありました。

勝つか負けるか それはわからない

それでもとにかく闘いの

出場通知を抱きしめて

あいつは海になりました

コロナ禍の今、こんな思いで暮らしておられる方がたくさんあるのではないでしょうか。飲食や観光業に従事する方。医療の最前線で献身的な働きをしてくださっている方…。

コロナ禍はさて置いても、人生は時に闘いの様相を呈することもあるもの。そうしたなかで、こんな思いを抱きながら、立ち向かっておられる方もたくさんあるかと思います。

少々やけっぱち気味に歌われるこの曲。その緊迫感は悲壮でありながら、腹をくくったひとの底力がほとばしるよう。聴いているうちに、根拠なく希望が湧いてくるのは私だけでしょうか。

以来、ついつい口ずさんでいる自分に気づきます。私は私の闘いのなか、へこたれそうになる心を鼓舞し、背中を押してくれる気がする不思議な曲。ただ今、私の応援歌です。

もしかしたら私みたいに、思わず口ずさんでいる方が日本中にたくさんおられるのかも。歌う人の数だけ、それぞれの「ファイト!」があるんだろうな。そんなことを思うこのごろです。

コロナがあっても、なくても、大変な時代を生きている私たち。そんな今、世の中に向かって、自分に向かって、渾身の思いで叫びたい。

ファイト!

下記に満島ひかりさん歌唱の動画のリンクを貼っております。ぜひご覧ください。

 

 

べネシアさんのこと2

素敵な女性

2020年11月11日

べネシアさんのこと2

先月のことになりますが、岐阜県在住の女性から、店に一通のメールが届きました。

アメーバブログをされているとのこと。そこでベニシアさんのことを紹介しようと検索していて、偶然に私のブログを見つけられたようです。

ベニシアさんというのはイギリス出身で、今は京都大原にお住いのハーブ研究家。素敵なライフスタイルでマスコミでも有名な女性です。去年、私がその展覧会に出かけた際の感動をブログに書いていたのでした。(ブログベニシアさんのこと

岐阜の女性、ありがたくも私のその文章を気に入ってくださったそうで、ご自身のブログの中に、私のブログのリンクを貼られたもよう。メールはその報告と、事後承諾になったことのお詫びでした。

さっそくその方のブログを覗いてみると、とても素敵な文章で。こちらこそ光栄なことと返信させていただきました。

改めて自分のブログも覗いてみると、昨年9月のものでした。自分で書いていながら、案外忘れているもの。一年前はこんなことを思っていたんだぁ、なんて懐かしく読み返した次第です。

そのブログの中でべネシアさんのこんな詩を引用していました。

 

日本の女性はとても賢い。

疲れていても、悲しくても、いつも微笑み、笑っているから。

私は、日本の女性から「和」と「柔」という英知を学びました。

 

 日本女性を言い得て妙な表現だなぁと改めて感心しながら、そのあとに続く一節に驚いてしまいました。

 

子供の頃は、人生の意味についてよく考えました。

どうして私たちは生きているのか。

ある日、その答えに気づきました。「幸せになるため」だと。

 

実は私、同じことに気づいたばかりだったのです!

そんな折も折、舞い込んできたメールに導かれ、ベニシアさんのこの詩にまた巡り会うなんて…。シンクロニシティというのでしょうか。とても不思議な気がしました。

それにしても、生きているのは幸せになるため、なんて…。どうして今まで気づかなかったのか、と思うくらい当たり前の答えです。不幸になるために生きている人など、多分いないはずですから。

子供の頃に気づかれたべネシアさんとは大違い。私はずいぶん時間がかかってしまいました。その分、気づけた爽快感はひとしおです。

誰しもそうだと思いますが、楽しいことばかりの毎日というわけにはいきません。時には泣きたい思いの帰り道も…。

そんな日も探せば一つくらい、いいことがあるものです。見上げた夜空に綺麗な月を見つけたとか。せめてもの慰めに買った成城石井のあんみつが、思いのほか美味しかったとか(笑)。

それだけのことで、ささやかでも幸せな気持ちになっている自分に、「うん、うん、その調子!」なんて声を掛けるこのごろです。

詩はこう締めくくられています。

 

物事をどう見るかで、幸せは決まります。

知恵と優しさと笑いの心を持って、人生を受け入れましょう。

 

「幸せ」は、自分が決めること。

 

Listen to your heart

自分の心の声に耳を傾けて

 

改めて、心に響くべネシアさんからのメッセージです。

思いはいろいろなところで、いろいろな形でつながっている…。そんなことを思わせられた今回の出来事。メールをくださった女性には心から感謝です。

これからもいろいろな思いをブログに綴っていこうと思います。引き続きお付き合いのほどよろしくお願いします。

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