大黒様

店のこと

2012年07月21日

古美術品を扱う方から「お店に大黒人形を置くといいですよ」とのアドバイスをいただきました。その際、こんなエピソードを…。

東京のとあるお饅頭屋さん。美味しいけれど、通りから少し入った決して立地がいいとはいえない場所。にもかかわらず行列が絶えず、不思議に思っていたところ、ふと見ると、行列のお客様の背中を見下ろすように大黒人形が。

この方、その様を見て腑に落ちられたとのこと。その話を聞いた私も鳥肌が立ちました。商売の厳しさもよくご存知で、「こうしたお力に、あやかればいいのよ」とも言っていただきました。

商売をするなら、誰しもこんな繁盛店になりたいものです。いいことを聞いた、それならうちも…。そうも思いましたが、鳥肌が立ったというのは、それとは少し違う感覚でした。

昔話や民話には様々な神様が出てきます。福の神や貧乏神、神様とは違いますが座敷わらしや、物の怪というのでしょうか、摩訶不思議なものたちも。心掛けをよくしていたら味方になってくれ、邪な心を持つと悪さをするとか。行いの善悪の目安が、子供にもわかりやすいよう、こうしたたとえ話になったのでしょう。

幼い日にワクワク、ドキドキで読んだ話は、大人になっても残っているもののようです。こうした神様が、今でもいたるところにいらっしゃる気がしてなりません。 そんな私ですから、これはもう大黒様に来ていただきたくってしょうがなくなった次第です。

といっても、大黒人形って、どこに売っているんだか。思いついたのが「しののめ寺町」近くの家具街、夷川通りに古くから続く唐木家具のお店です。ここの大奥様、80歳を超えてなおお綺麗で、毎日元気にお店に出ておられます。うちの開店以来、ごひいきいただいていて、商売の極意や人生の機微などを、いつもユーモラスに話してくださいます。

さっそく訪ねて事情を話すと、「ああ、あれ」と言って、出してきてくださったのが一木造の大黒人形。木肌に年輪が浮き出て、飴色のいい艶が出ています。大きさもいい具合で、なにより表情のいいこと。申し訳ないくらいリーズナブルな価格で、一目惚れで譲っていただきました。

一つ一つの家具、小物を大切に扱われ、売れた折には嫁に出す思いと話されていた大奥様、お互いに胸いっぱいの売買でした。

先日、大奥様がご来店、飾り棚に置かれた大黒様を見て、「ええ場所に置いていただいて」と、とても喜んでいただきました。「毎日、撫でてあげると、ますますええ艶が出まっせ」とのこと、実践しています。

米俵を踏みしめ、打ち出の小づちをかざした勇ましいポーズ。背中には床につかんばかりの大きな袋。お宝がいくらでも入りそうです。そして思わずこちらまで和んでしまう柔和な表情。なにもかもがめでたいこと、めでたいこと。そこに居てくださるだけで、すでにご利益いっぱいです。

あれやこれや、もっとご利益を、と思わないではありませんが、そう思ったが最後、大黒様はそっぽを向いてしまわれそう。欲深い心は持たないことにします。

ご来店の折、大黒様を見つけられたら、ぜひ撫でて差し上げてください。ご利益は一人占めするより分け合うもの、大黒様はきっとそうお望みだと思います。

寡黙な名脇役

店のこと

2012年07月12日

開店時にはたくさんのお祝やお花を頂戴しましたが、お酒もたくさんいただきました。

縦長の箱を斜めに抱えて入ってこられるや、すっと差し出される姿は、皆さんとても様になっていました。男性なら渡哲也、女性なら高島礼子に見えたものです。

さっそく飲んでみると、これが美味しい! 以来、毎晩、夕食時に冷やでいただいています。下戸のためぐい飲みに一杯ですが、すっかり日本酒の魅力にはまっています。

日本酒といえば、じゃこ山椒にも塩昆布にも欠かせないものです。

開店に当たり、調味料について改めて勉強しましたが、日本酒がいかに重要な役割を担っているか再認識したところです。

ちりめんじゃこや昆布が主役なら、日本酒はいぶし銀の名脇役というところ。

うちの日本酒、寡黙ながら主役を盛り立て、いい仕事をしてくれています。

調理場の中央にでんと置かれたその姿は、じゃこ山椒や塩昆布が炊き上がるのを、じっと見守ってくれているようにも見えます。頼もしい存在です。

ミニミニギャラリーで紹介しているように、飲み終わった瓶を使って店内にディスプレイしています。日本酒党のお客様と会話が弾むことも。そんな私たちをまた黙って見守ってくれているような。ホント、寡黙な名脇役です。

親玉堂さん

店のこと

2012年07月04日

早いもので7月になりました。

さかのぼりますが、皆さんは6月30日に和菓子「水無月」を召し上がられたでしょうか。

お彼岸のおはぎ、十五夜の月見団子など季節の和菓子は、美味しい思いをしながら手軽に風流も味わえ、なんといい習慣かと思います。

特に夏越の意味合いを持つ水無月は、夏が苦手な私には欠かせないもので、

これで夏を乗り切れる!

と、毎年、自己暗示をかけるように、気合を入れて噛みしめています。

残念ながら二年ほど前に廃業されましたが、買うのはいつもご近所の和菓子屋「親玉堂」さんでした。こじんまりと風情のある店構えで、通りかかると、もち米を蒸すいいにおいがしてきたものです。カランカランと下駄の音が聞こえたと思ったら、「おはよう!」とご主人に声を掛けられることも。

和菓子はどれも、くせのない上品な甘さで、年配のご夫婦の人柄とともに、地元で愛される和菓子屋さんでした。

今は行きつけの店はなく、今年の水無月は出かけたついでにデパ地下で買いました。それなりに美味しかったのですが、なにか味気ないものが。

店先での奥様とのなんでもない会話、出来立て手作りならではの美味しさ…、思い出されるのは、やっぱり「親玉堂」さんの水無月です。味の記憶は味覚だけにとどまらず、その向こうに、えもいわれぬ情景が伴うものなのですね。

自分が店を開いて、「親玉堂」さんがどんなにか素敵な店だったかを実感しています。

今日も一日、元気で頑張ろう!

店のこと

2012年06月30日

5月2日のブログに書きましたが、フェイスブックを始めて、2ヶ月が過ぎました。

フェイスブックというのは…、

ごく簡単に説明すると、自分の素性を明かしたうえでインターネット上に登録し、承認し合った者同士が情報を送受信できる仕組み、というのでしょうか。

起業家セミナー仲間から恐る恐る始めた小さな輪が、友達の友達は友達方式で、少しずつ大きな輪に広がりつつあります。商売上、必要に迫られて始めたつもりが、私自身がすっかり楽しんでいる状況です。

各方面で活躍されている皆さん、夜もお元気ですが、朝もお元気。仕事前の早朝から書き込みをされている方も。

締めくくりは、

みなさん、今日も一日、元気で過ごしましょう。

なんて言葉が多いです。

決まり文句のような言葉ですが、書いた方の笑顔やお仕事ぶりが目に浮かび、読むたびに心に響きます。

何年前からでしょう、いつの頃からか、私は毎朝、心の中で

今日も一日、元気で頑張ろう!

と唱えるのが習慣になっています。

辛いときほど、心の中で拳を突き上げて、声高に叫んできたように思います。

人からは「いつも元気やね」と言われ続けて何十年。

ちゃうねん、ちゃうねん…、

と心で思うも、この言葉の効果だったのかもしれません。

今日も一日、元気で頑張ろう!

店を始めた今、やっぱり、毎朝、そう心で唱えて一日をスタートしています。

以前と違うのは、フェイスブック仲間の皆さんの声が、ハミングのようにかぶさっていることでしょうか。

デジャブ

店のこと

2012年06月10日

開店から3ヶ月近くが過ぎました。

少しずつお馴染みさんが出来つつあり、その中にはご近所の高齢の方も。

杖を突きながらや、手押し車を押しながら来られては、店内の椅子に腰掛けてしばしお喋り、なんてこともよくあります。

ふと、この光景、どこかで見たような、と不思議な思いに駆られることがあります。そんなこと、あるわけないしなぁ、あぁ、そうそう、開店前に思い描いていた光景やんと思い至り、さらに不思議な思いに…。

じゃこ山椒も塩昆布も、スーパーマーケットに行けば手軽に安価で買うことが出来ます。高齢のお客様にとっては、日々の買い物のついでに済ませれば便利なことでしょう。

それでも「これは、やっぱり、あの店で…」そう思って足を運んでいただける店でありたい。味はもちろんのこと、そこでのお喋りがまた楽しい、そう思っていただける店…。構想中に私が思い描いていた店の光景です。

そのままの光景を、今、目の当たりに出来て幸せに思っています。

写真はご近所の玄関脇の紫陽花です。こんな季節になっていたのかとビックリ。

店作りに奔走し始めた去年の秋以来、紅葉も桜も味わうことなく過ごしてきました。

また少しずつ、季節の移り変わりを楽しむ余裕を持ちたいと思います。

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