メレンゲ妃
店のこと
2013年11月14日

【山椒メレンゲ】もう召し上がっていただいたでしょうか。
今年3月の一周年企画を考えるなかで思いついたのが、じゃこ山椒にちなんで山椒風味のオリジナル菓子をプレゼントしては、ということでした。ご近所の洋菓子店「シェ・ラ・メール」さんに相談したところ、快く引き受けてくださり、誕生したのが【山椒メレンゲ】です。とても好評で、引き続き販売することになった次第です。
いわば、フランスの「シェ・ラ・メール」家から、日本の「しののめ寺町」に国境を越えてお嫁に来てくれたようなもの。この【メレンゲ妃】、色の白さといい、フォルムの可愛らしさといい、地味ぃ~なじゃこ山椒と塩昆布に花を添えてくれています。よく出来たお嫁ちゃんだなぁと、いつも惚れ惚れ眺め、大切に扱っている私です。
それにしても、うちでお菓子を販売するなんて思ってもいないことでした。「シェ・ラ・メール」さんにしても、たくさんの商品を作ってこられたお店ですが、うちの依頼がなかったら山椒風味のメレンゲ菓子は生まれなかったのではないでしょうか。まさにコラボならではの商品です。
この【山椒メレンゲ】ますます好評で、「シェ・ラ・メール」さんにも問い合わせが多く寄せられているようです。いっそ「シェ・ラ・メール」さんで販売してはという声もあるとか。けれど「『しののめ寺町』さんで販売している限り、うちでは売らへん」と言ってくださっています。「それが商売の筋というもの!」と。まるでお嫁に出した娘さんのよう。まさに【メレンゲ妃】です。
ありがたくて「シェ・ラ・メール」さんには足を向けて寝られません(笑)。改めまして、この場を借りてお礼申し上げます。
心を開いて飛び出していくと、その先にこんなにも素敵な出会いが待っていて、そうしてこんなにも素敵な新しいものが生まれる…。【山椒メレンゲ】を眺めながら、改めてなんて素晴らしいことだろうと思うこのごろです。
これからも、まだまだ新しいものが生まれていきそうな予感がしています。「しののめ寺町」にも、そして私にも…。末永く見守っていてくださるよう、今後ともよろしくお願いします
ポテトなじかん
店のこと
2013年10月03日

先日、「ポテトなじかん」というテレビ番組に出させていただきました。関西で頑張るホットな人を紹介する45秒のコーナーです。
昨年のラジオ出演(ブログJupiter)といい、一般人の私がどうしてっていう感じですが、光栄なお話はお受けした方がいいかと。一人では不安で、頼りにしている起業家仲間「ナロウボート キョウト」さんhttp://www.narrowboat.jpに一緒に出てもらった次第です。
「しののめ寺町」も映っていることですので、動画をご覧いただけるようにしています。が…、まったくもってお恥ずかしい。
小学校の学芸会、クラス一美人の女の子がお姫様役。舞台中央でスポットライトを浴びて演じているのを、召使役の私が舞台そでで見ていたら…。いきなり背中を押されて、舞台中央に出ちゃった、スポットライト浴びちゃった、あわわ、どうしよう…、みたいな。そんな戸惑い満載の顔をしていて、自分でも笑ってしまいました。
私、やっぱり、センター向きじゃない。(笑)
あまりテレビを見ないもので芸能ネタに弱いのですが、AKB48でしたっけ? 総選挙とやらで、指原なんとかちゃんが一位になって見せた戸惑いの表情、わかる気がします。センターにはセンターに収まりのいい人というのがあるものです。例えとはいえ、AKBを引き合いに出すのは厚かましいことでした。スミマセン。
私、高校野球を見れば、補欠にも選ばれないスタンドで応援する選手が気になります。劇団四季のミュージカルを観れば、舞台のうしろのうしろの、そのまた端っこで踊る俳優さんが気になります。きっと自分を投影するのでしょう。
そこからのし上がりたいと思うタイプの人もあるのでしょうが、私はそこはそこで居心地がよかったりして。万一、センター行きの話が舞い込んだとしても、他の人にどうぞどうぞと譲ってしまうタイプです。
控え目とかでなく、自信がないんです…。
こんな私ですが、店を始めたら、そんなことも言っていられません。「宣伝 命」と思って、前へ前へ出るよう心掛けてきました。でもやっぱり板についていないのが、この放送を見てよくわかりました。
なんだか、たどたどしい。(笑)
素敵なお店には必ず素敵な人がおられます。そうした方は自分の魅力をよくご存知で、自分が看板、自分が商品と自負して、店のみならず自身をプロデュースするのがうまい。まさに店は人なり、人は店なり。
「しののめ寺町」は寺町という素晴らしい立地に建つ店です。創業以来37年愛され続けている「じゃこ山椒」という看板商品があります。あとは、そこに立つ人…。
私のたどたどしさに、見かねて手を差しのべてきてくださった方も多かったと思います。そろそろ、たどたどしさを卒業し、堂々と「しののめ寺町」のセンターを努められる人になりたいと思います。しっかりとプロ意識を持って。
自分を客観視する機会を与えてくださった毎日放送さん、ありがとうございました。
もらい泣き
店のこと
2013年09月21日

お客様と出来るだけお話をするよう心がけています。
「ご旅行中ですか?」
「お住まいはお近くですか?」
ちょっとお声かけするだけですが、それが糸口になって、会話が弾むことがしばしばです。
観光中の見どころやご家族のこと、ときにその方の人生に深く入り込んだお話になることがあります。京都に、あるいはうちの商品にまつわるドラマチックなお話をされる場合もあり、思わず聞き入ってしまいます。なかには話しているうちに感極まって涙を流されることも。
私の想像もつかない華やかな世界だったり、あるいは過酷な経験だったり。内容は様々ですが、どんな人生にも普遍的なものがあるのでしょう、なにか身につまされるものを感じ、私までもらい泣きしてしまい「ティッシュ、ティッシュ」ということも。
京都に佃煮屋は数あれど、店先でお客様と店の者が涙ふきふき話し込んでいる、なんて店は珍しいのではないでしょうか(笑)。
開店から一年半が経ちました。ご結婚の引き出物に使っていただいたお客様が、幸せそうなお顔を見せてくださったり。粗供養に使っていただいたお客様が、一周忌にとまた来てくださったり。去年喜ばれたからと、敬老の日の贈り物に同封する小さなお子さんの書かれた絵を持参されたり…。
つくづく店というのはただ商品とお金の授受をするだけの場所ではないんだなぁと実感するこのごろです。商品を買うとともに、お客様は「なにか」を求めて来られているんだと。それがなになのか。少しずつわかってきたような、まだまだわからないような。
誰しも、うれしい時、悲しい時があるものです。なんのお役に立つわけではありませんが、どんな時でも、ふらりと立ち寄っていただけるような、そんな店であれたらいいなと思います。
書くひと 書かれるひと
店のこと
2013年07月12日

紹介コーナーでも載せていますが、ただ今発売の雑誌「まっぷる歩く京都」で「しののめ寺町」が掲載されています。
少しずつですが、こうした取材を受ける機会が増えてきました。通常、カメラマンさんとライターさんの二人で来られるのが基本でしょうか。この時は若い女性のコンビでした。ライターさんが、私たちの話を一所懸命書きとめられていた姿が印象的でした。
というのも…、実は私、数年前に一度だけこうしたライターの仕事をさせてもらったことがあるんです。情報雑誌のラーメン店特集で、ラーメン屋さんを取材して記事を書くというものでした。
ラーメン店の店主といえば頑固一徹、こちらの対応が気に食わなければ怒鳴りつけられるだの、ラーメン店の取材が出来たら、あとはどんな店でも大丈夫だの、事前にずいぶん脅されました。それでも、めったにできない経験と思い、興味津々で引き受けたのでした。
一番初めに訪ねたのは、かなりの老舗店です。頑固親父に「とりあえず食ってみろ」なんて言われる場合も想定して、空腹で出かけたのですが、待っておられたのは結構高齢の女性でした。カウンターに出されたのはラーメンならぬアイスコーヒー、ちょっと拍子抜けし、そしてホッとしたのを覚えています。
雑誌の発売前だったか、直後だったか、この店の前を通りかかると、違う店名のラーメン屋さんに変わっていました。取材時に雑誌の発売予定日を聞かれ、数ヶ月先の予定であることを伝えると、「もっと早、出たらええのになぁ」とポツリと漏らされた女将さんの言葉が、妙に心に引っかかっていました。廃業に至る事情は知る由もありませんが、商売の厳しさを思い知らされた、とてもショックな出来事でした。
次に訪ねたのは、料理人さんが独立して始められたという店でした。確かにそんな風情のご主人で、繁忙時間が過ぎ、奥様らしき方が自転車で帰っていかれるところでした。パートさんを雇うより、そりゃあ奥様頼みだろうな、なんて思いながら後ろ姿を見送ったのですが、まさか数年後、自分も似たような立場になるとは想像もしませんでした。こちらの店は今も健在で、通りかかるたびにご夫婦のことを思い出します。
幸い大きなトラブルなく十数件の取材を終えました。そのなかで得た情報をもとに、個々の店の良さを精一杯表現する作業は楽しいものでした。少しずつでもこの仕事を続けられたらいいなと思いましたが、そんな甘い世界ではなかったよう。一度きりの思い出で終わってしまいました。
書く側の仕事は叶いませんでしたが、気づけば、書かれる側の仕事をするようになっていました。本当に先のことはわからないものです。いずれにせよ、どちらも厳しい仕事です。
うちに取材に来てくださった方たちに、いつまでも安心してもらえるような店でありたい。一度きりでもライターの経験のある私は、切にそう願います。
晴れ着
店のこと
2013年05月24日

もう気づいてくださっている方はあるでしょうか。塩昆布の袋が新しくなりました。
うちの看板商品は、なんといってもじゃこ山椒です。塩昆布はその1割にも満たないでしょうか。なんにつけそうですが、少しの量でものを作るのは割高なものです。というわけで、じゃこ山椒の袋を併用してきました。
お姉ちゃんのお下がりを着せられた妹を見るような…。主役の横で肩身が狭そうな脇役を見るような…。
不憫に思えて仕方がなかったのですが、ようやく専用の袋を作ってやることが出来ました。文句も言わず、健気に頑張ってきてくれた塩昆布、それはそれなりにいい役割を演じてくれています。これくらいのご褒美があってもいいのではと。
娘にやっと晴れ着を着せてやれた親の気分です。
まだまだ未熟な店、揃っていないものがたくさんあります。ゆっくりではありますが、ひとつひとつ大切に揃えていきたいと思います。心尽くしの晴れ着を誂えるように。