素敵な女性
2017年03月03日
佐藤初女さんのこと4
先月のこと、素敵な写真展に出かけてきました。
オザキマサキ写真展
没後1年、京都で初女さんに会う。 ギャラリーヒルゲート
2016年2月1日、94歳で逝去された佐藤初女さんの一周忌に合わせて、京都で開催された写真展です。佐藤初女さんとは…。青森県は岩木山の麓で、宿泊施設「森のイスキア」を主宰。来客を心づくしの手料理でもてなす一方、請われれば全国、海外、どこへでも講演に出かけられる。そういう活動に生涯を捧げられた女性です。
その最晩年のお姿をカメラに収められたのが、滋賀県在住のカメラマン、オザキマサキさん。日常に寄り添っての撮影。カメラの腕前はもとより、初女さんが、そのお人柄に全幅の信頼を寄せられたのであろうことは、想像に難くありません。
私が一人「森のイスキア」を訪ねたのは約8年前。既に人々の話題になり、なかなか予約が取れない状況のなか、本当に幸運なことでした。そこで過ごした時間、いただいたお食事は、今も大切な宝物です。(ブログ佐藤初女さんのこと3)
この感動を誰かに伝えたいと思うことはありましたが、私のまわりで初女さんのことを知る人は少なく、中途半端な説明はかえって誤解を招くかも。そんな不安から、私一人の胸の中で大切に温めることとなりました。
「森のイスキア」を訪ねた時には思いもしなかったことですが、その3年後、店を開くことに。ホームぺージを作ると、折に触れてはブログに初女さんのことを書くようになりました。
去年のこと、初女さんと古くから親交のある方が、私のブログを見つけ、店を訪ねてくださいました。京都のお寺の奥様で、初女さんを慕う人たちを繋ぐべく尽力されているもよう。初女さんを彷彿とさせる温かい佇まいに、思わずこみ上げるものがありました。
以来、ご来店のたびに、初女さんの在りし日のことを伺ったり。初女さんゆかりの手土産をいただいたり。初女さんが一気に身近な存在に思えるようになりました。そうしてご案内いただいたのが、今回の写真展。出かけたのは、雪がちらつく寒い平日。にもかかわらず、会場は来訪者でいっぱいでした。
柔らかく、淡い色調のモノクロ写真。撮影されたのは今から2年前とのこと。初女さん、92歳。写真の中の初女さんは、私が訪ねた8年前、86歳の頃の面影を残しながらも、さらに小さくなっておられました。
凛とした佇まい、柔らかさ、優しさ、透明感、静けさや強さ、そしてただただ美しい…。
オザキマサキさんが初女さんに抱かれた印象です。初女さんを余すところなく見事に表現された言葉。まったくもって共感するばかり。90歳を超えてなお、こうも美しい女性があるでしょうか。
淡いモノクロ写真の中の初女さんを拝見しながら、ふと、生前よく初女さんが話されていた言葉を思い出しました。
透き通る瞬間…
野菜を煮る際、ちょうどいい頃合いになると、野菜が透き通るのだとか。その瞬間に、命の移し替えが行われるとのこと。それを見逃さないことの大切さを、講演で、著書で、よく説かれていました。(ブログ透き通る瞬間)
あぁ、初女さんも透き通っていかれたんだなぁ、と思いました。持てる力を過不足なく使い切り、限りなく透き通って、透き通って、そうして消え入るように亡くなっていかれた。多くの人の心に「命の移し替え」をして…。
写真展は、空前の来訪者だったようです。知る人ぞ知る、初女さん。静かに偲ばれる中高年の方が多いのかと思いきや、初女さんのことをよくご存じない方、若い方が多かったとのこと。今まさに「初女さん」が必要とされている時代なのでは。そう思わずにはいられません。
今回、写真展のみならず、ゆかりの方たちで催される懇親会にもお誘いいただきました。それぞれの初女さんにまつわるエピソードを伺いながら、私はただただ夢見心地。その場に自分がいることが不思議でなりませんでした。
今回、全国各地で、ここ京都で、初女さんの思いを受け継いだ方たちが、様々な分野、形で活動されていることを知りました。これまで自分ひとり胸の中で温めてきた思いを、私も表現していきたい。微力ながら、発信する側になりたい。そんな思いを強くした夜でした。
私、なんで、こんなとこ歩いてるんやろ…
「森のイスキア」への一本道を歩きながら、心で呟いた言葉です。一体なにに掻き立てられて、こんなところまでやって来たのか、と。
8年の時を経て、答えを見つけられた気がしています。私は私の透き通る瞬間を模索しながら、進んで行こうと思います。
今回の写真集発売を記念したイベントが、近々、東京で開催されます。詳細は下記をご覧ください。