店のこと

2018年10月03日

価格とは

先般よりお知らせしていましたが、9月14日より価格の改定をさせていただきました。既に新価格でご購入いただいたお客様はいらっしゃるでしょうか。どのような感想を持たれたか、気になるところです。

開店から6年半。この間に、原材料、包装資材など、諸々のものが値上がりしてまいりました。実のところ、価格の見直しは、数年前からいつも頭の片隅にあったことでした。

そんななか、昨年末より、ちりめんじゃこの不漁と価格高騰という事態に。これまでにない深刻な状況に、いよいよ値上げやむなし。との思いを強くし、年頭より今年最大の課題と位置付けた次第です。

とはいえ、価格の改定は大きなリスクを伴います。額はどのくらいが妥当か。時期はいつが適切か。果たしてお客様に受け容れていただけるのか…。慎重にも慎重な検証が必要です。

うちの商品をまじまじと眺めながら、まわりにに溢れる商品やサービスを見渡しながら、頭の中にあるのはいつも「価格」のこと。

ふだん自分はどんな風に買い物をしているんだろう、と考えてもみました。目の前にある物やサービスと、それにつけられた価格を見比べ、納得すれば買うし、納得しなければ買わない。

結果、満足することもあれば、不満に思うこともあり。そうした経験を繰り返し、自分なりの値ごろ感をつかみ、価値観を培い、私流の購買行動が生まれていったんだなぁ、と思います。

店を始めて、価格の仕組みや、からくりなど、少しわかってきました。売る側と、買う側、双方の思いがあり、うまくかみ合うか、かみ合わないか。その駆け引きの妙が、買い物の醍醐味というものなのかもしれない。

なんて偉そうなことを思いつつも、自分の店のこととなると、一向に答えが出ません。そもそも値上げなど、お客様から喜ばれるはずもないこと。答えを出すのが怖い、というのが正直なところかもしれません。

京都には「おじゃこ」を扱われるお店が、数えきれないくらいあります。今回の値上げに当たっても、店頭で、ネットで、他店をいくつか調べてみました。

破格に安価なお店から、破格に高額なお店までさまざまです。各店の価格には、それぞれに意味があり、その意味を求めるお客様で、そのお店は成り立っているのでしょう。

7年前の秋、急に決まった開店でした。物件が見つかるや、短い準備期間のなか、改装や備品の調達などハード面の整備に忙殺される毎日。独立という事情から、価格については踏襲するのが当たり前と考え、改めて見直す余裕もないままのスタートとなりました。

開店から、どれくらいのお客様に来ていただいたでしょう。お一人お一人がご購入の折に、ふと漏らされるご意見やご感想があります。私たちの思いが伝わっていると実感できることもあれば、ズレに気づかされることも。

出来る範囲で改善を繰り返してきましたが、そうしたことでは解消し切れない、もどかしさのようなものが、いつからか私の中から消えないものとなりました。これは一体なになのか…。

それは、自分たちの価値をお客様にきちんと伝えられていない、という歯痒さなのではないか。そう思い至りました。

厳選された上質な素材を使い、秘伝の調味で、毎日、炊き上げるじゃこ山椒(ブログ味2)。風情ある街、寺町で、安心安全な手作りの味を、手から手へ届けること。それが私たちの価値であると考えています。

そうした価値を表現するもの。それが価格なのではないか。適正につけられた価格は、単なる値段にとどまらず、価値を雄弁に語ってくれるものなのだと気づきました。

お客様に喜んでいただくことは、なにより大切なことです。同時に自分たちが心身ともに健康で、喜びを感じながら商売をできること。不遜ながら、それもまた大切なことだと考えます。

そうして長く店を続けていくことが、ひいてはお客様の喜びにつながる…。そうあれることが願いですが、そのために欠くことができないのが、やはり適正につけられた価格なのでは。

価格について考えることは、店の有り様(ありよう)について、自分たちの人生について、考える良い機会となりました。

一方で、漁の回復を期待してきましたが、春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が来るも、その兆しは見えず。これ以上の先延ばしはできないと判断いたしました。熟慮を重ね、最後は他店との比較ではなく、うちとしての適正価格を探り、出したのが今回の価格です。

暴利をむさぼるつもりは毛頭ありません。どんな反応も受ける覚悟ができたところで、日程を9月14日と決め、店頭やホームページでの告知に踏み切りました。ところが…。

価格表の変更など諸々の準備を終え、あとは当日を待つばかりとなった、前日の9月13日。その日は定休日でしたが、私は朝からパニック状態に陥っていました。お客様から非難ごうごう受け、泣きそうになっている自分の姿が、頭から離れません。

気休めでもなんでも、なにかしていないと、緊張と恐怖で圧し潰されそう。足裏マッサージ、岩盤浴、等々…。日頃、時間とお金を割り振りながら受けている心身のメンテナンスを、贅沢にも朝から夕方までフルコース詰め込みました(笑)。

蓋を開けてみると、お客様の反応は思いのほか寛容なものでした。「スーパーで売っているちりめんじゃこも高くなっているわねぇ」なんて、理解を示してくださるお客様も。

私は幻の魔物と、ひとり格闘していたんですね。ここまでプレッシャーに弱い人間だったかと呆れるばかりですが、うれしい肩透かしに、ただただホッとしているところです。

まだ値上げをご存じでないお客様もたくさんいらっしゃいます。ご負担をお掛けすることは心苦しくはありますが、丁寧に説明を続けていこうと思っております。何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

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