店のこと
2020年07月06日
少しだけいつもと違う景色
月に一度は必ず! と決めていたこのブログ。開店以来ずっと守ってきたのですが、6月は書けないまま終わってしまいました。申し訳ありません。
新型コロナウィルス騒動のさなかは、言い知れぬ不安や恐怖の毎日でした。けれど、誰もが大変なんだと自分に言い聞かせて、辛うじてやり過ごすことができたように思います。
終息を見ないながらも緊急事態宣言が解除され、再び暮らしが動き始めました。
今、コロナ禍を語る人の話を聞くと、その内情は実にさまざまだったことに気付かされます。生活を保障されていた人から、廃業や失業に追い込まれた人。ステイホームで家族の絆が強くなったという人から、DVの恐怖に怯えていた人…。
それぞれに大変さはありながらも、その差はあまりに大きい。人の数だけコロナ禍があることを、心に留めておかなければいけないなぁと思います。
「新たな日常」という掛け声のもとリスタートした暮らしもまた、家庭環境や職場環境によってさまざま。その中で、自分で考え、自分で決定し、自分で行動していく。そういうスタイルが求められる時代に入ったと感じます。
そんな手探りの生活のなか、いち早く順応できる人もあれば、戸惑いの中にいる人もあるのではないでしょうか。もともとあった格差が広がるのではと懸念されます。
かくいう私も、戸惑いの中にいる一人です。この難局を乗り切るには、多くの能力や行動力が必要だなぁと、ため息をつきながら、哲学者のように考え事ばかり。もうすぐ石膏像になってしまうんじゃないかと思うくらいです。石膏像になる前に動けよ、って話ですが(笑)。
コロナ禍のさなかは考える余地もなく、我慢するしかないとこらえていたしんどさが、今頃になって出てきたように感じます。
気づけば、もう何ヶ月も移動は自宅と店の往復だけ。目にするのは同じ景色ばかりのうえに、空や月を見上げることも、うつむいてばかりで忘れがち。
これじゃあいけないと、6月の半ば。久しぶりに仕事帰りに近くのカフェに立ち寄ってみました。
再開したばかりなのでしょうか、いつもは満席の店も客はまばら。入り口近くの窓際の席に座ると、夜風が心地いいこと。正面の本棚に、敬愛する女性の一人、白洲正子さんの著書を見つけ拾い読み。
窓からの眺め、店内のしつらえ、本の中の素敵な写真…。なんということもないものばかりなのに、普段と違うというだけで、とても新鮮に目に映りました。
同じ景色ばかり見ているということは、それだけで結構しんどいものなのかもしれません。五感はどれも大切だけれど、目からの情報はやはり大きいもののようです。
旅にでも出て、どこかの絶景を眺められたら最高でしょうが、決してそうでなくていい。身近にある、自分が心地いいと思える場所から見える、少しだけいつもと違う景色。そういうものをまめに自分に見せてやることは、とても大切なこと…。
脳も心身もリフレッシュしていくのを感じながら、そんなことを思ったひとときでした。
まだまだ考え事の日々は続きそうです。そんな合間に、少しだけいつもと違う景色をはさみながら、乗り切っていきたい。そんなことを思うこのごろです。