心と体のこと
2012年10月18日
もう一度 立ちたい場所
私、旅行が大好きです。そんななかで、もう一度行きたい、というより、もう一度立ちたいと思っている場所があります。
3年前の夏に乗鞍から穂高あたりを旅行したのですが、そのなかの一ヶ所、新穂高温泉駅からロープウェイで上った終点、西穂高口の展望台です。幸運にも天候に恵まれ、槍ヶ岳をはじめとする穂高連峰の大パノラマを目の当たりにすることができました。
誰しも、大なり小なり困難を抱えて日々を送っているものでしょうが、その捉え方は様々のように思います。なんでも他人のせいにするタイプも困りものですが、やたら自分を責めるタイプも難儀なものです。私は間違いなく後者のタイプ、どんな困難であれ全ての元凶は自分にあると思いがちです。
展望台に立って雄大な景色を眺め、まずは感動し、やがて山に抱かれるような安心感に包まれました。「母なる山」という表現がありますが、私にとって山は老練な男性でした。「いいんだよ、いいんだよ」という野太い声があたりから聞こえ、すべてが赦されていくような気がしました。澱んでいたものがろ過されていくような心地よさに、いつまでも立ち去り難く、飽かず山と空を眺めていました。
ようやく展望台を後にしてロープウェイに乗り込むと、「しっかり生きていけよ」という、やはり野太い声がうしろから聞こえた気がしました。背中を押す大きなエネルギーを感じ、とめどなく涙が流れました。地上でまた生きていく私に、山がエールを送ってくれている。山に赦され、山に力を与えられ、浄化されたような新たな思いで帰路に就いたのを覚えています。
そんなことを思い出したのは、ちょっと疲れている証拠でしょうか。もう一度、あの場所に立ってみたい。その時、私は恥ずかしくない思いで山と対峙できるだろうか。今度は山はなんと声を掛けてくれるだろうか。なんて考えます。
けれど穂高まではちょっと遠い。せめて展望台の売店で買った山のDVDでも見て、英気を養うことにしましょう。