アートなこと

2020年03月14日

ゴッホ展

ゴッホ展

2月の終わりに、神戸の友人と兵庫県立美術館で開催中のゴッホ展に出かけてきました。

かなり以前に京都の美術館で観た時は、日本の浮世絵から受けた影響に焦点が当てられていて、とても興味深い企画だったことを覚えています。

今回は、初期から死の直前までを、そのときどきに影響を受けた巨匠たちの作品と共に鑑賞できるという展示方法。その間の心情を綴った弟への手紙も添えられていて、まるでゴッホの心の中をのぞき見ながら、画風が確立されていく過程を辿るよう。

ゴッホはいかにしてゴッホになったのか…、という今回のテーマそのままに、これもまた興味深い企画でした。

初期の作品は、ミレーを模倣したものや、農民たちの質素な生活を描いた素描など、静謐な雰囲気漂うものでした。地道で謙虚な創作姿勢がうかがえ、これが、あのゴッホ?と、意外な一面を見る思いでした。

のちの強烈な個性の発露も、こうした確かな基礎があればこそだったのだと、基礎の大切さを改めて痛感した次第です。

その後も、常にまわりの画家たちを観察し、尽きない探求心と実践の繰り返し。各コーナーを巡るごとに、ゴッホがゴッホとなっていく気配が感じられ、高まる期待の最後に待っていたのは…。

黄色の穂が一面に波打つ麦畑。たわわに実るオリーブの木。こぼれんばかりの薔薇の花…。あぁ、これぞゴッホ! という絵が並び、期待を超える感動でした。

なかでも一枚の絵に、息を呑んでしまいました。糸杉です。

大地や、草、木から立ち昇る生命力を、そのまま絵筆に乗せて叩きつけたような激しい筆致。絵が放つエネルギーに気圧されそうになりながら、私は懸命に対峙していました。

なんでもないと言えば、なんでもない風景。それがゴッホの目にはこんな風に映っているんだ。その研ぎ澄まされた感性に驚くばかりです。

ふつうの精神状態では、とてもこんな絵は描けない…。そう思いました。

精神に変調をきたし、猟奇的とさえ思える波乱万丈な人生でしたが、満足のいく絵を描き上げられる喜びと引き換えに、そんな自分をも受け容れているような諦観した境地を、ゴッホ自身が語っています。

塗り重ねられた絵の具の一筆一筆にこもる思いの激しさ、ひたむきさに胸震え、泣きそうになってしまいました。

美術界に強烈な存在感を残したゴッホですが、37年という短い人生の中で、創作に費やした年数はわずかに10年だったとか。濃密な人生は、痛々しくも、お見事としか言いようがありません。

ゴッホが命がけで確立した唯一無二の画風。それを目の当たりにし、ゴッホには遠く、遠く、及ばないけれど、私は私の唯一無二の絵を描く人生でありたい。そう強く願った展覧会でした。

このところのコロナウィルスの影響で休館を余儀なくされていましたが、3月17日から3月29日まで無休で開館されるとのこと。美術館の皆さんの熱意とご尽力に敬意を表したいと思います。

一日も早く騒動が収束し、日常はもとより、芸術や芸能を心置きなく楽しめる日が来ることを願ってやみません。ご興味ある方は、体調や衛生管理にお気を付けのうえお出かけください。

注)このところの状況により再び休館となっているようです。随時、ホームページをご確認ください。

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