アートなこと
2019年10月30日
杉本晋一展
今月始めのことになりますが、素晴らしい展覧会を観に神戸まで出かけてきました。「杉本晋一展 重力都市シリーズ 騒めく景色」です。
実は私、子育てが少し落ち着いた30代半ばの頃、服飾の専門学校に通った経験があります。高校を卒業したばかりの子らと机を並べて、二年間、主婦と学生の二足のわらじの毎日。ハードではありましたが、今につながる貴重な経験となりました。
その時、講師として来てくださっていたのが杉本先生です(ブログ杉本先生から教わったこと)。
デッサンと色彩学。出される課題は難しいものでしたが、ご自身がアーティストである先生の授業はとても楽しく、毎回、心待ちにしていたのを覚えています。
卒業後に個展の案内状をいただき出かけたところ、これまでに観てきたどんな作家さんとも違う作風に、たちまちファンになってしまった次第。以来、個展があると知れば、京都はもちろん、少し遠くても出かけて行くようになりました。
近年ではニューヨークで成功をおさめられるほどに。さすがにニューヨークまでは出かけられませんでしたが(笑)。
立体や様々な作品を制作してこられた杉本先生ですが、私が特に好きなのが重力都市シリーズです。無機質な空間を描かれた巨大な絵で、いくら観ていても飽きることがなく、ぐいぐい引き込まれていく不思議な世界。その中を一人、二人、宙を舞う女の子がいます。
大人びているようで、あどけない。リアルなようで、ファンタジー…。なににも分類されない、えもいわれぬ魅力を持った女の子です。
冷たく緻密な世界を、生々しい肉感と体温を放ちながら、ほとんど生まれたままの姿で縦横無尽に浮遊する姿は、究極の自由と解放を謳(うた)っているよう。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。うれしい時はうれしいし、悲しい時は悲しい。したいことはしたいし、したくないことはしたくない。とばかりに…。
こんな風に自由でありたいなぁ。
これらの絵を観るたびに、私は絵の中の女の子に憑依して、一緒に宙を舞っている気分を味わいます。その解放感といったらたまりません。いつからか、女の子は私の絶対的な憧れとなりました。
しんどいなぁと思う時、心の中に女の子が現れます。女の子は私を絵の中に誘い出し、一緒に宙を舞ってくれます。たちまち自由な世界に解き放たれます。
ずっと彼女と遊んでいたいところですが、そうはいかず。現実の世界は、こんな自由気ままでは、とうてい生きていくことはできません。時には感情をコントロールし、好き嫌いを言わず、したくないこともしていくのが大人ってもの。それが円滑に生きていくための知恵です。
でも…、やっぱり…、好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。うれしい時はうれしいし、悲しい時は悲しい。したいことはしたいし、したくないことはしたくない。
心だけは、こんな風に自由でありたいなぁ。
唐突ですが、心理学の世界ではインナーチャイルドという言葉があります。いくつになっても、心の奥底に存在している女の子、とでもいうのでしょうか。私の中にもいるのですが、その子がいつもありのままで、楽しそうにしてくれていたらいいな。そんな風にいさせてあげたいな。そう思っています。(ブログ私の中の女の子2)
杉本先生の絵の中の女の子は、まさに私の願いそのもののよう。
これまでは下記のような鮮やかな色彩で描かれていましたが、今回は一転、上記のような色彩になりました。実はこれ、ボールペンのみで描かれたとのことです。大きな会場の天井に届くほどの巨大な絵。しかも数枚。その製作工程を思うと気が遠くなります。
新しい作風の絵のなかで、今回も女の子は健在でした。進化し続けられる杉本先生と共に、女の子も進化し続けているよう。私もまた進化し続けなければ、置いてきぼりをくらいそうです。
次回、対面できる日まで、私も精進しておかなくっちゃ。そんなことを思った展覧会。アートの世界でいっぱい遊んだ、素敵な秋の一日でした。